HERE TODAY DIARY Season2

　三十一年前、今頃はドラマ『決定版！蒲田行進曲』の後編を観ていた。沖様演じる銀ちゃんが柄本明演じるヤスに、大原麗子演じる小夏を任せるシーンの寂しげな表情をしている頃だ。
　『決定版！蒲田行進曲』は来月ＣＳのＴＢＳチャンネル２で放送されるので、ぜひたくさんの方に観てもらいたい。

　沖様が亡くなるまで『はつらつ３０歳』というＣＭが流れていた。開局したばかりの福島放送で朝7:15から流れるので学校に行く前、必ず福島放送にチャンネルを変えた。笑顔の沖様はイジメられて学校に行きにくい私に元気をくれた。「大丈夫だよ！学校に行きなさい」って言ってくださってるように思ったものだ。
はつらつ３０才　日本民間放送連盟ＣＭ: youtu.be

　日付は六月二十八日。この日は沖雅也さんの命日。当時八歳の私はとても衝撃を受けて次の日、学校を休んだ。
　あの日、学校から帰り、両親が「馬鹿だな…まだ若いのに…」って言いながらテレビを観ていた。画面には高層ホテルからの中継だった。沖雅也さんの写真が画面の隅っこにあった。「スコッチ、キャプテンだ！」と私はとてもびっくりして、じっと画面を観てた。「沖雅也が死んだんだよ」と母から聞いて、言葉が出なかった。
　前の週、『決定版！蒲田行進曲』で沖さんは汗だくになりお芝居していたのを観たばかりで後編がこの日に放送されるので、姉たちに「絶対観せてね」と念を押していた。続きを観る日に沖さんは亡くなってしまったのである。まだ小さかったから死ぬとかよくわからなかったけど、もう見られなくなるのだと思って、夕食の前、部屋で少し泣いていたと思う。
　物心ついた時、『俺たちは天使だ！』や『太陽にほえろ！』での沖さんが大好きで、テレビに出るときはワクワクするほどだった。学校を休んだ時、高島忠夫夫妻の料理番組『ごちそうさま』で美味しそうなお料理をしていたり、『２時のワイドショー』ではお宅訪問(確かカルーセル麻紀さんが沖様のご自宅に行った)して、リビングに飾ってある高そうなブロンズの装飾品に「このケツがいいんですよ！ケツがでかい女はたまらないですよ」とか何とか言って自慢してる沖様に笑った(笑)。『クイズダービー』のゲストの時ははらたいらさんの隣の席で正解を連発して、すごいなあと感動したことも。
(私は子どもの頃の記憶はたくさん覚えているため、リアルタイムの沖様をこんな風に覚えているのである)

　去年、三十年のブランクを経て再び沖雅也さんのことを思い出して今に至る。子どもの頃観せてもらえなかったドラマや映画を観ることができて、とても充実している。
　子どもの頃にはわからなかったが、沖さんはとても優れた俳優だった。作品の一つ一つがすべて違う芝居をしている。こういう俳優は今の日本にはいない。一つ一つが沖様ご自身で工夫しアドリブも多彩、アクションや殺陣もスタントなしにご自身でやり何メートルもあるところからジャンプして飛び降りたり、悪役も鳥肌が立つほど恐ろしく演じることもできる。
　そして、時には歌手になり、レコードもたくさん出されていた。ご縁あって沖友がＣＤにして送ってくれて、たくさん聴いている。作曲は都倉俊一やなかにし礼などそうそうたる歌謡界の顔ぶれ。初期はアイドル調だが、中期からは当時流行っていたＡＯＲを取り入れたりしてお洒落なサウンド。そして沖様ご自身で書いた詩を朗読しているのも収録されているのだが、それが哲学的で素敵！様々な才能がある方だった。
　沖様の生前最後のスキャンダルは金髪の美女の恋の噂。二人ともトレンチコートを着ていた写真か映像がワイドショーで流れた。そのことをこの間、夢でお尋ねしたことを書くのを忘れて、今書くけど、あの金髪の美女は英語の先生だそうで、月に何回か英語を教えてもらっていたらしい。実はハリウッド進出の準備をしていたそうだ。恋のお相手は他にいたけど、死ぬつもりだったから別れを告げたとか仰っていた。ハリウッド進出観たかったなあ！ねえ。

　私はそんなに長生きできないことを薄々感じているせいか、あの世に夢で行けている。夢で沖様にお会いできて本当に嬉しい。成仏なさって、映画監督までやっちゃってるそうだから何も心配しなくてよさそう。元恋人の坂口良子さんとも仲良くしているらしいし(笑)。
　でも考えてしまう。沖様が生きていたらエンタメ界はどうだったのかを。生きていらっしゃったら、もっと私達を楽しませてくれたはず。あれから３１年。来年は三十三回忌。沖様にとって特別な年になる。どうか各メディアで特集してもらいたい。松田優作さんだけじゃないぞ、沖雅也さんも名優だ！と声を大にしていいたい(笑)。
　節目にお墓参りしたいのだが、今の体力では難しい。誰か車椅子で連れていってくれないかなあ……。

　沖様へ
夢でお招きくださり、ありがとうございます。
こうしてキャプテンのお言葉を皆さんにお伝えしています。
キャプテンの名誉のために、すべて書かせてもらっています。
また私を呼んで下さいね。
キャプテンが心穏やかに過ごせますように。


哀しみをこえて: 沖雅也
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