HERE TODAY DIARY Season2

　連日、生憎の曇り空。時折小雨が降っている。もう秋雨の時期なんですな。寒いので部屋でジャズを聴きながら、ココアをすすりながら読書や映画を観るに限る。

　さて、今日観た作品は『ラスト・コーション』。珍しくアジア映画でございます。映像美には定評あるアン・リー監督の作品。

　日本軍占領下の１９４２年の上海。傀儡政府のスパイのトップ、イー(トニー・レオン)は以前香港で出会った女性ワン(タン・ウェイ)と再会する。時は数年前にさかのぼる。香港の大学生だったワンは、抗日運動に燃える演劇仲間たちとイーの暗殺計画に加わり、彼に近づくことに成功する。だが、イーがあまりに守りが堅いことで計画は中々進まず…。そんな最中突然、イーが上海に帰ったことで計画は流れかけたが、レジスタンス活動を行う組織は上海に戻っていたワンに再び、イーの暗殺計画の協力を求める。ワンはイーに再び近づき、彼の愛人になり、緊張感と甘美な日々が始まる。

　人の中で心の揺れ動く繊細なまでの描写には圧巻でした。日本占領下にあって反日の中国の様子はあまり描かれてないのですが、時代に翻弄された若者たちの細やかな感情が上手く描かれていたと思います。
　ヒロインのワンは、まるでくの一のように機敏と状況を演じ分けます。命がけでスパイとなり、敵の特務機関の役人イーに近づくもいつしか愛を感じるように。公開当時話題となった二人の激しい濡れ場は明日をも見えない現実から解放される瞬間でもあり、同時に二人の大きな悲しみが色濃く出ている場面でもありましたね。ワンがラストで「逃げて！」と言います。その言葉には深い意味があるのですが、まだご覧になられていない方のために割合させていただきます。
　しかし、新人女優というタン・ウェイの体当たりの演技が素晴らしかったですね。実尺二時間半という長編なのに、ちっとも退屈せずに観れましたよ。出来たらもう一度観てみたい秀作でした