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映画『潜水服は蝶の夢を見る』を観て。

 すっかり秋めいている。赤トンボが庭で羽を休めているし、彼岸花も咲き始めた。暑い夏が遠ざかり、どこか人恋しい…のは私だけ?(笑)

 さて、また映画を観る時間が出来たので一本紹介しよう。今日は『潜水服は蝶の夢を見る』。ずっと観たかった作品である。実話。

 ファッション紙「ELLE」の編集長だったジャン(マチュー・アマルリック)は、ある日、病院のベッドで目を覚ます。体は全く動かないばかりか言葉も喋れない。しかし思考はそのままで神経のみが麻痺してしまう、いわゆる“閉じ込め症候群”になった事を告げられ、ショックを受ける。体の自由が利くのは左目のみだ。絶望を感じるジャンだったが言語療法士の献身的な対話により、前から企画していた本の執筆を始める…。
 監督は『バスキア』でデビューしたジュリアン・シュナーベル。この人は実話の主人公をリアルに描くので、こんな話をただただ観客を泣かせるようなことはしません。だからこそ、私は観るのが楽しみでした。

 体が自由に動くということが実に幸福であるか、健常者の方はこういう映像を観て感じるのかもしれません。私は生まれつき右半身が麻痺しているため、常に体の半分に違和感があり、突っ張るような重さがあります。でもそれは生まれた頃からずっとこうなので、大して深刻でもなく当たり前のように思っています。普通がどんな風だかも判らないですしね。でもね、東京の病院に通うまで、六歳まで全く立って歩けませんでした。そしてある日、両足で立った時の景色が今でも鮮烈に記憶に残っていて、歩くことがどんなに便利かがわかった瞬間でもありました。歩けるってスゴいなあ、そのうち友達とかけっこできるかも、なんて思ったけど、それは無理だった!(笑)。
 そんな私と比べたらこのジャンは元々健常者で、ある日突然目しか動かない状況に陥ったことは残酷ですね。仕事もプライベートも謳歌していたのに、考えていることも口に出して言えない。言語療法士の力を借りなければ、何も伝えられないのですから。しかしながら、そんな状況でも夢や想像力は病気になる前よりずっとリアルに描くことが出来るんですよね。彼の感性が豊かだったからに違いありません。
 劇中で何度も出てくる車椅子で海で佇む映像が、彼の心を表しているような気がしました。打ち寄せる波も遠くに見える水平線も、自由を奪われた彼のように無口であり、どこか淋しさを感じました。
 美しい映像とともに、主人公は残りの人生で精一杯目を見開いて言葉を紡ぎ出します。ただ卑屈な環境を嘆くのではなく、素直に身を任せているようでもありました。
 最後にこれだけは言える。生きてるって奇跡なんだよ。体が自由に動くって素晴らしいことなんだよ。
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