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DARS


白いダースドリンク

一口目、おっダースだ!
二口目以降、余り甘くないのでゴクゴク飲める!

飲み物としてとても美味しくできていました。ダースのホワイトが好きな人にはとてもオススメの商品です。

モンハン/雑魚モンスター(2回目)


画像加工アプリも試した。

帰宅中の電車の中でできた。楽しいが、色々やってこのクオリティかと思うとどうでもよくなる。

モンハン/雑魚モンスター

文字入れアプリを試す為だけの画像。

なんかクンチュウが薄いなカメラの画質のせいだなと思ったら実際薄く描いていたから自分に責任があった。

ケルビの美しさが好き。

ゲネポスの雑魚っぽさも嫌いではないが。

ジョセフ バートン/呪う者の悲哀

主人が嬉しそうに笑うと私も嬉しくなる。主人の喜ぶこと、主人の好むこと、主人の愛するもの、主人の選ぶもの、それらが分かると私はとても嬉しくなる。

そう教えられてきたし、そうあるべきだ。私のような人間を迎えて雇ってくださる人に、恩を示して報いることになんの疑問の余地があるだろうか。

しかし私には、その当然のことが、時々恐ろしくなることがある。

主人が無知蒙昧の男だったら?

主人が悪逆無道な男だったら?

主人が悪人だったら?

私は信じて付き従う人を、自ら選べるのだろうか。そんな良識と勇気を、果たして持ち合わせているだろうか。

私には分からない。だから恐ろしくなる。

「ありがとう」

アキ様は傷だらけの腕を伸ばしてタオルを受け取った。

見た目には唯の子供にしか見えない彼が適格者だというのがまだ信じられない。ただ、アキ様から感じる底知れない不気味さが、唯一彼をそう思わせる。

「いつから家事役なの?」

アキ様は髪から滴る水を乱暴にタオルで吸い取りながら言った。

「3年程前からです」
「そっか。今忙しいのに、呼んじゃってごめんね」
「とんでもございません」

それに続く言葉は、思い浮かばなかった。




【呪う者の悲哀】




シエラは悲しげに私を呼んだ。時折見せるその息苦しそうな表情を見ると、私はとても悲しくなる。

シエラは呪われている。

「旦那様はまだお目覚めになりません。寝室がお留守でしたから、書斎にいらっしゃるようです。エリーゼが書斎に伺っています」

書斎の中から入れる続きの部屋にはベッドが置かれていて、主人は書斎で遅くまで仕事をした時は寝室まで行かず、そこで寝てしまうことも多かった。昨夜も遅くまで部屋から明かりが漏れていたから、そこで寝たのだろう。

「分かった。私も行くよ」

私がそう言うと、シエラは小さく頭を下げた。

不憫なシエラ。

シエラを呪ったのは、私だ。

書斎に向かうと、エリーゼが扉の前に立っていた。

エリーゼはつい最近雇われた女だ。誰かからの紹介らしいが詳しいことは分からない。主人が宜しく、とおっしゃったから、私は彼女に仕事を教えるだけだ。

「おはよう、エリーゼ」

エリーゼははっとして私を見上げた。

「おはようございます、ジョセフ様。あの、ノックしたのですけれど、お返事がなくて」

私もノックしてみた。

返事はない。

「失礼致します」

書斎に入ると部屋は暗いままだったが、奥からは明るい光が見えた。持ってきた主人の着替えを書斎に置いて、部屋の奥の入口に立つと、ベッドの上で主人は上体を起こして本を読んでいるのが見えた。

「おはようございます」
「おはよう」

主人が穏やかに笑ったので私はほっとした。

「お茶をお持ちしても宜しいですか」
「頼む。もう起きるよ」
「かしこまりました。お召し物をお持ちしましょうか」
「構うな、向こうにあるのだろう?」

主人が書斎に目をやったので、私は「はい」と答えた。

「向こうで着替える」
「かしこまりました」

頭を下げて部屋を出ると、エリーゼがまだ立っていた。手にはティーセットの乗ったトレーを持っている。一度キッチンに戻っていたらしい。

エリーゼは字が読めて賢い女だった。お茶の淹れ方を教えると、茶葉の銘柄や淹れ方の違いをよく覚えた。またよく気の利く女で、手が欲しい時に頼まなくてもこうして手伝ってくれるので、助かっている。真面目な性格を気に入られて、他の給仕とも上手くやっているのも嬉しい点だ。

「もう起きていらっしゃるから、お茶をご用意して差し上げて」

私が言うとエリーゼは微笑んで「はい」と頷いて書斎に入っていった。

エリーゼの笑顔は清廉で明るくて、主人もそういうところを好んでいるのか、身の周りのことを直接頼むことも多いようだ。他の給仕達は主人を少し怖れているが、エリーゼはそうは見えないところも主人は好ましく思っているのかもしれない。

私も主人が少し怖い。

シエラだってそうだろう。

私は一度そこを離れて、新聞と手紙を持って主人の書斎に戻った。

主人は用意した服に着替えていた。そして楽しそうにエリーゼと話している。こういう明るい表情は私には見せないので、つい主人の顔をじっと見てしまった。

「ここら辺にあるものは、君にも楽しく読めると思うよ」

主人は書棚の一部を指差した。そこには小説や戯曲の本が並んでいる。宗教や哲学を題材にした古典的なものから、最近好まれるような俗っぽいものまである。俗っぽいものは、おそらく売り込みに来られて、そのまま買ったものだろう。どうやらこれらの本をエリーゼに貸してやるらしい。

エリーゼは嬉しそうに本を出しては冒頭の数行を読んでいる。

主人はエリーゼの様子を微笑みながら眺めては、時折その本について説明をした。声音も何処か優しげだ。

エリーゼはそんな主人の話しに嬉しそうに聞き入っては、また別の本を手に取って読んでいる。

二人が暫くそんなやり取りを続けていたので、私は新聞と手紙を静かに机に置いて、主人の脱いだローブを畳んで持った。

このまま失礼した方がいいかな。

私が部屋を出ようとしているのに気付いたのか、主人は「待ちなさい、ジョセフ」と言って呼び止めた。そして椅子に腰掛けて手紙を持つと、優雅にペーパーナイフで封を切って中身に目を通した。

「欠席だ」

主人はそう言って手紙を私に手渡した。

「かしこまりました」と言って受け取った手紙を見ると、結婚式の招待状だった。街の若い者からの招待なのでちょっとした祝儀と花束でも送れば良いだろう。

それから主人は軽く新聞にも目を通したが、その間に何度もエリーゼに目をやっていた。

「何か変わったことは?」

主人の質問に、私は「ございません」と答えた。

「そうか。ありがとう、もう下がっていい」
「はい。失礼致します」

私は礼をして部屋を出た。

主人の目線はずっとエリーゼにあった。

エリーゼのことが余程気に入ったらしい。

今までも『お気に入り』と呼べる給仕は何人か居たが、エリーゼに対してはそれより更に態度があからさまだ。普通なら贔屓していると思われて古株の給仕に嫉妬されるところだろうが、エリーゼの清廉さがそうさせないことは私にとっても有難いことだった。

煩わしいことが起きないといいが、この先もそうだという保証はない。

そもそも主人はエリーゼにどんな気持ちを?

まさか、恋慕を?

いや、まさか。

家事室に行くと給仕達が食事の支度を進めていた。そこにシエラを見付けて声を掛けた。

「シエラ」
「お兄様。先程エリーゼが茶器を持って書斎に行きましたよ」
「ああ、来てくれた。今もまだ書斎に居るんだが、他の仕事は大丈夫か?」

主人と仲良く話すことがエリーゼの仕事ではない。朝食の準備や接客の用意、買い出しなどもシエラの仕事だ。今、彼女が仕事をサボっているという訳でもないが。

シエラは「大丈夫よ」と言って笑った。

シエラは笑ったが、私には何処か悲しげに見えた。笑っていても苦しそうな目をしている。呪われているからだ。私に、呪われているからだ。そしていつか、シエラはこの街の『黒い柩』に、呪い殺されてしまいそうで恐ろしい。

アキ様もシエラと同じだ。

呪われている。

「シエラ、アキ様をお願いしてもいいか?」
「ええ」
「では朝食の準備と付き添いを頼むよ」
「かしこまりました」

シエラは笑って頷いた。

その瞬間、私はシエラを呪っていた。
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自分の趣向

塔の上のラプンツェル(Tangled)を見て気付いたこと。


I see the lightがとても好きで何度も聞いてしまいます。

“And at last I see the light”

っていう表現が好きです。泣きそうになるくらい好きです。ついにあの光を見たわ。あの光はこれだったのね、っていう喜びの歌。

町から上がる灯りを指して言っているのだろうけれど、それだけじゃなくて、二人に希望の光が射したように聞こえて、それが好きなのです。

それはただの光じゃない、未来を照らす明るい光。


私は、こういう話しが好きなんだな。

主人公かヒロイン(もしくは王子役)は、人には話したことのない孤独を抱えていて、それを相手役が癒してくれる、という。王道中の王道なんだと思うけど、いつもそれにやられてしまう。

フリン・ライダーの孤独、ラプンツェルの孤独、それが癒されて希望を得る。そして、私にも光が見えたよ、って歌う。

“Now I'm here
suddenly I see”

ここに来て、ふとわかったの。
ぱっと見えたの。
突然はっきりしたの。
ようやく辿り着いたの。


朝日を見て、泣きたくなるくらい美しくて、とても感動することがある。苦しみの朝、朝日が余りに綺麗で自分が情けなくなるんだけど、働かなければいけないんだとも思わされる。

光には特別な力があるらしい。

ラプンツェルとフリン・ライダーの、“suddenly”っていうのも、だからよく分かる。その時は急に来る。突然、わかる。


今まで好きになったキャラクターもそうです。

るろうに剣心
剣心は普段へらへらしてるけど、心には深くて暗い孤独を抱えていた。でもそれを薫が癒してくれた。

東京クレイジーパラダイス
竜二はポーカーフェイスで傍若無人に振る舞うけど、心には孤独を抱えていた。でもそれを司が癒してくれた。

PLUTO
ゲジヒトは心(記憶)にぽっかり穴が空いているけど、ロボットだから淡々と働いていた。でもそれをアトム(あるいは取り戻した記憶)が癒してくれた。

鬼がふり返った時
竜は雨、風、雷を操り自由に暮らしていたけど、心には孤独を抱えていた。でもそれを椿が癒してくれた。

陰陽師
晴明は陰陽師としての腕は一流だけど、人とは距離を置いて暮らしていた。でも博雅はその距離を取っ払ってくれた。

オペラ座の怪人
ファントムはオペラ座を支配して生きていたけど、強い疎外感を抱えていた。でもクリスティーヌがファントムに人の温もりを教えてあげた。

ダークナイト(バッドマン)
ブルースはバッドマンとして毎夜暴れてプライベートでは遊びまくっているけど、心には孤独を抱えている。
だから誰かに癒してもらって欲しいなっていう妄想が生まれる。

鋼の錬金術士
マスタング大佐は一流の錬金術士でエリート軍人だけど、孤独を抱えていた。
だからそれを誰かに癒してもらって欲しいなっていう妄想が生まれる。

天空の城ラピュタ
シータは明るく賢く振る舞うけど、心には孤独を抱えていた。でもそれをパズーと空賊達が癒してくれた。

キサラギ
キャラクターみんな好き。喪失感からの希望。

私が好きになるキャラクターとストーリーって、半分くらいはこのパターンなのかもしれない。それくらいこの王道展開が好きです。


ラプンツェルも、だから好きです。

アナと雪の女王は見たことないけど、ラプンツェルも面白いのに、余り話題にならなくて寂しいです。

七井 充/侵入者

サーバーのバッテリーを交換するというので、業者から派遣された人と一緒にサーバー室に行くことになった。業者はかなり慎重に選ばれた政府機関御用達の企業だが、その作業員はと言うと、ごく普通の人間にしか見えない。

「TSCシステムズの倉田です。よろしくお願いします」

倉田さんは爽やかな営業マン風の男だったが、本人は、自分は技術屋で営業はしたことがなく、しかも人見知りだと言う。

嘘だ、と思った。

ちょっと緊張はしているようだけれど、人好きのする笑みは人見知りのものとは思えない。俺の浮かべている笑顔の方が余程ぎこちないに違いない。

「お世話になります。七井です。こちらから入ってください」

俺がセキュリティカードで扉を開くと、倉田さんは「失礼します」とはっきりした口調で言ってから、大きな台車を押して中へ入って来た。彼は厚みが10センチ以上ある扉にも臆せず、口だけは「やっぱりセキュリティ厳しいですね」とだけ言った。

慣れているらしい。

「新しいバッテリーなんですけど、前のと少し大きさが違ってて、交換にけっこう時間がかかりそうなんですよ」

倉田さんは申し訳なさそうに言った。

「構いませんよ」
「ありがとうございます」
「今日は、お一人ですか?」
「あ、あの、申し訳ありません。本当は、いつもなら、二人でやるものなんですが、来る予定だった並木が体調を崩しまして」
「そうでしたか。大丈夫なんですか?」
「少し時間が余分にかかるんですが、作業は大丈夫です」

確かに事前に作業員は2名と伝えられていた。暇だから今日一日立ち会っても良いかなと思っていた俺は、「そうですか」と答えた。

倉田さんは台車を不器用そうにふらふらしながら押している。荷物が重いからだろう。

手伝った方が良いものだろうか。

ちょっと手を添えて支えるぐらいのことならば。

「七井さんって、その、お若いんですね」

倉田さんは、そんなことをふいに口にした。しかし俺がすぐに答えられずに言葉に詰まるのを見て、申し訳なさそうに「すみません」と続けた。

「いや、申し訳ありません。つい、そう思ったもので」

倉田さんは目を伏せて笑った。

こういう普通の会話っぽいものをするのは、どうも慣れない。子供の頃からそういうことは訓練でしかやってこなかった。更に、訓練では、「お若いんですね」というのは老齢の人間に対する褒め言葉だと教わったので、それが自分に向けられて余計に頭が混乱している。

普通に、と思えば思うほど、普通の返事ができなくなる。

「倉田さんも、若く見えますけど」

俺の言葉に倉田さんは「本当ですか?」と言って顔を上げて、困ったように笑った。

そういう反応が“正しかった”のか。

「ええ。おいくつですか?」

質問されるより質問する方がまだましだと判断し、俺は間髪あけずに質問した。倉田さんの笑顔は先程よりも力が抜けていて自然で楽しそうで、彼はむしろ質問される方がいいらしい。

「32です」

倉田さんは照れた時の癖なのか、口元を手で隠しながら答えてくれた。

俺は倉田さんのその普通っぽい反応に感心しながら、その内容にも気を取られていた。

32、と言った。

すると彼は俺より6歳も年上ということになる。若く見えるタイプの顔立ちだとは思っていたが、まさかそれ程年上だとは思わなかった。倉田さんは見た目だけなら20歳くらいに見える。学生服を着れば学生に見えるだろう。

「こちらのエレベーターから下ります」

俺は倉田さんの年齢についてコメントできずに、唐突に道案内をしてしまった。

倉田さんは特に気に留めていないらしく「はい」と言って微笑んだ。その表情だって20歳くらいにしか見えない。

大きな黒目は輝いて、前を真っ直ぐ見据えている。綺麗な色白の肌は張りがあって、くすみもない。ワックスで整えられた黒髪は傷みもなく、若々しく艶めいている。細身の体はしなやかで贅肉もなく、きびきび動く。

32歳?

嘘だろう?

「あの。やっぱり、倉田さんは若く見えますね」

俺がそう言うと倉田さんは少し顔を赤くした。

「頼りなく見えますよね」
「いえ、そういう意味ではありませんよ」
「実際、同僚に言われますから……」
「いい意味で、見た目を裏切ってるってことですよ」
「そうですかね。なんか、すみません」

倉田さんは力なく笑って、それは確かに少し頼りない姿だった。軍人にはいないタイプの人間だから、俺にはその平凡さが新鮮でとても好感が持てるように思える。

その時、エレベーターが止まった。

停止音とともに扉が開いて、現れたのは木邨さんと白衣を着た男だった。

白衣の男は、見たことがない人間だけれど、うちの勤務医のようだった。セキュリティカードが首から下がっている。

「あれ、七井君だ。お疲れさまです」

木邨さんはエレベーターに乗り込みながら挨拶した。

「お疲れさまです」

木邨さんは大きい台車を眺めて、「なんですか、それ」と尋ねた。

「サーバーのバッテリーです。交換するので、来てもらってて」

俺は倉田さんに目配せした。

「あ、こんにちは。お疲れさまです」

木邨さんは俺と違って自然な感じで倉田さんに挨拶した。

倉田さんは木邨さんに親しみやすさを感じたのか、ちょっと気の抜けたような笑い方をした。俺と最初に話した時は爽やかな営業マン風だったけれど、今はそうでもない。

「お世話になっております」

話し方もどこか受け身で、人見知りは本当かもしれない、と思った。

木邨さんは倉田さんに一歩近付いた。

「はじめまして」

木邨さんは倉田さんさんを下から覗き込んでじっと見詰めた。照れた倉田さんは「TSCシステムズの倉田です」と言って顔を赤くした。

「ねえ、僕も着いていっていいですか?」

木邨さんは俺を見て尋ねた。にこにこ笑っている割りに、断れないような圧力を感じて、俺は「はい」と答えるしかなかった。横目で見ると、倉田さんもそのプレッシャーのようなものを感じたのか、目線を左右に泳がせている。

俺が念のため「大丈夫ですよね」と確認すると、倉田さんは優しく微笑んだ。

それから木邨さんは白衣の男を見て「藍沢先生も来ますよね」と尋ねた。男は名前を藍沢というらしい。『先生』と呼ばれたので、やはりうちの勤務医なのだろう。

「ああ」

藍沢先生は木邨さんと目を合わせずに短く答えるだけだった。

木邨さんは倉田さんと世間話をしていて、それがとても自然で穏やかだったから、俺は話しに相槌をうってばかりだった。藍沢先生もほとんど話しには加わっていない。

倉田さんが32歳だと教えた時の、木邨さんの「まさか」という反応を、俺はメモして帰りたいとさえ思った。

こうあるべきだ。

学校で習ったとおりだ。良い印象を与える話術。俺には獲得できなかった技術。

木邨さんは、凄い。

エレベーターを降りてサーバー室に向かう道で、倉田さんが楽しそうに笑ったり頷いたり驚いたりして、俺は作り笑いでそれを見ていた。

同じ知能でも、使い方でこうも違うのか。

或いは俺は馬鹿なんだ。

サーバー室は暗くて寒い。寒いのはたぶん、冷房が効き過ぎているからだろう。

まずサーバー室に入ることができるセキュリティカードを持っている俺が中に入った。カードと番号と指紋で開く扉は、これまでより更に分厚い、30センチはあるものだ。中から3人を振り返ると、木邨さんが倉田さんの前に立ちはだかっていた。

「ねえ、倉田さん」

その声はとても優しくて、彼の残忍さを少しも感じさせなかった。

「武器の持ち込みは禁止されていますよ」

サーバー室から流れてくる冷気が辺りを包んだ。




【侵入者】




木邨さんは俺と同じ文官なのに、俺と違ってどうして立派に軍人に見えるのだろうか。彼の持つ残忍さを俺も持っている筈なのに、俺にはできないことを彼はする。

倉田さんが動揺したと俺にでもわかった瞬間、木邨さんは倉田さんを思い切り蹴り飛ばした。容赦なかった。

倉田さんは抵抗しようとしたけれど、膝が折れたらそのまま立ち上がれなくなった。

「君は、この為に私を呼び止めたのか」

藍沢先生は倉田さんを診て溜め息混じりに呟いた。

倉田さんは脳震盪で体が思うように動かなくなったらしい。一度立ち上がろうとして、木邨さんに今度は下から蹴り上げられて、すっかり動かなくなった。

こんな時は、上司に報告?

応援を呼ぶ?

この場の責任者は、俺?

えーと、なんだ。

どうしたらいいんだ。

木邨さんは倉田さんの近くに屈んで刃渡りが20センチぐらいはありそうなナイフを放り投げた。倉田さんが持っていたらしいそれを、俺は慌てて回収する。

それから木邨さんは倉田さんの服を脱がし始めた。

「七井君、後藤さんに連絡できる?」
「はい」

なるほど、上司に報告するのか。俺は暢気にそう思いながら後藤さんに連絡を入れた。

緊急回線で繋げると、後藤さんは直ぐに出た。

「どうした?」
「バッテリー交換に来た人、武器を持ち込んでたみたいで、いま武器を取り上げたところなんですが、誰か応援を呼んだ方がいいですか」
「ユズとヨルを呼ぶ。場所は?」
「第二サーバー室前です」
「第二サーバー室前、了解した。状況を詳しく教えて」
「えー、と」

こうして話している間にも、木邨さんは脱がせた服で倉田さんを縛っている。状況は刻々と変化して、なんと言っていいのか分からない。危険な状況からは脱したのか。応援が来たら何をして欲しいのか。どう説明すべきなんだろう。

木邨さんはバッテリーが積載されている筈の台車を開けて中を確認し、そこから拳銃を取り出したかと思ったら平気な顔で試し撃ちした。

本物だった。

「銃声か?!」

後藤さんが慌てたので、その声に俺も驚いた。

大丈夫です、と言おうとした時に、ヨルが現れて、木邨さんに銃口を向けた。

「ゆっくり銃を置いて手を上げてください」

木邨さんは黙って従った。

「藍沢先生、状況を教えてください」
「あ、ああ。この転がってるのがバッテリー交換に来た業者で、ナイフを持ってたんだ。そいつは経理課の職員だよ」

藍沢先生は木邨さんに目を向けて言った。

その時、音もなくユズが現れて、俺に銃口を向けた。俺は自分がナイフを持っていることに気付いた。動いたら撃たれそうでナイフを捨てることもできない。

ユズはヨルを見ずに「遅れてごめんね」と言った。

ユズは俺に「ナイフを置いて手を挙げろ」とは言わなかった。言ってくれれば抵抗せずに降伏できたのに、言われないから却って俺は心許ない。

どうやったのかナイフと拳銃を持ち込んだ当人の倉田さんは気絶して転がっていて、俺と木邨さんが銃口を向けられているなんて、なんだか複雑な心境だ。

弁明したいけどできない。

投降したいけどできない。

味方に投降するというのも変な話しだけど、彼らにとって今の俺は敵に等しいだろう。

「藍沢先生、この人は?」

ヨルは木邨さんに向けていた銃を下ろして俺を見た。

俺はユズの目をじっと見詰めている。引き金に掛けられている指が少しでも動いたら、せめて右か左にでも避ける為だ。たぶん手遅れだと思うけど、まあじっとしてるよりは良いはずだ。右か、左か。

うん。左かな?

「情報室の七井君だよ」

答えたのは木邨さんだった。

ヨルは、恐らくは反射的に、再び木邨さんに銃口を向けた。直後、「あ、すみません」と頼りない声で謝罪したが、木邨さんは珍しくちょっと驚いていた。

「ああ、七井さん。情報室の」

ユズはそう言って何か閃いたような顔をした。

俺に向けられていた銃はそれで下された。

「お世話になってます」

俺がそう言うと、声を聞き覚えてくれていたのか「ほんとだ」と呟いてヨルも俺を見た。

二人が俺を知っているのは当然だ。さっき後藤さんが二人を呼んだ時のように、情報室から出動命令や帰還命令を俺が伝えることもあるからだ。何名かでやっている仕事だけど、彼らとも何回か仕事をして、会話もしたことがある。

「じゃあ、そいつ捕まえればいいの?」

ユズはそう言って銃口で倉田さんを指し示した。かなり物騒に思えるが、ユズにとっては違うらしい。木邨さんもヨルもなんとも思っていない様子だ。

彼らは敵なら当然撃ち殺す。殺すなという命令でもなき限り、敵を“誤って”撃つことはあり得ない。

ユズは倉田さんの直ぐ側に屈んで、銃で倉田さんをつついた。

倉田さんは無反応だ。

「それ、私が適当に縛りました。すみません」

木邨さんがそう言うと、ユズは黙って倉田さんの手足を錠で固定して、それを軽々と担いだ。ユズが目配せすると、ヨルは台車の中を簡単に確認してからユズの近くまで台車を押した。台車の扉を開いたユズは倉田さんをその中に放り込んだ。

ガン、とぶつかる音がした。

物みたいに倉田さんが扱われていて、俺は少し怖くなる。

ユズが倉田さんを足で押し込むとヨルがそっと扉を閉じた。ちょっと心配そうに中を覗いていたヨルに、俺はとても親近感を覚えた。

「じゃあ、僕らはこれで」

そう言うと二人は台車を押して廊下を歩き始めた。

二人はもう帰るらしい。

「あ、ちょっと待ってください」

俺が呼び止めると二人は足を止めてくれた。ユズが不思議そうに首を傾げている。

後藤さんに報告した方がいいよな。

ヨルの仕事振りを間近に見たのは初めてで、すっかり感動してしまっていた。いつも頼りなさそうな通信が多いので一般人のように思ってしまっていたけれど、それは違った。

彼も軍人なのだ。

そして俺もまた軍人だ。自分の仕事をしよう。

俺が発信すると後藤さんは直ぐに応答した。

「捕獲は終わりました。あと、俺達って、どっかに行った方がいいですよね。ユズ達について行けばいいですか」

俺はサーバー室を施錠してユズとヨルを見た。

俺達だって証拠みたいなものだ。それに倉田さんをサーバー室の目の前まで招き入れた責任だってある。報告書は提出するにしても、聞き取りの調査もあるはずだ。

木邨さんと藍沢先生は俺が後藤さんとやり取りするのを聞いていて、特に何も話していない。後藤さんの指示に従う積もりのようだ。

「男を拷問にかけるんじゃないかな」
「え?」
「見たいですか?」

『拷問』?

見たいかと聞かれたら、見たくないと答えたい。

「そういう趣味はありませんが、必要ならば加わります。倉田さんとは私が一番長く接しました」

俺がそう言うと、後藤さんは「君は度胸があるね」と答えて笑った。

「こちらからも報告することがあります。ユズとヨルは好きにさせていいから、七井君は情報室まで戻って来てくれますか」
「了解です。木邨さん達と居合わせて、いまも一緒に居るんですが」
「ああ、観てましたよ。二人が来たいと言えば来てもらってもいいし、仕事があればそちらを優先させて構いませんよ」

観てたと言うのは、監視カメラからの映像のことだろう。

「了解です」

ちょっと腑に落ちないが、俺は指示に従った。ユズとヨルには台車と倉田さんの体を片付けてもらい、藍沢先生には自分の仕事に戻ってもらった。

時間があるという木邨さんには情報室まで同行してもらっている。

情報室には椅子に腰掛けた後藤さんがいて、何やらにこやかに笑っていた。部外者に武器を持ち込まれたというのに、どうもおかしい。

「戻りました」
「おかえりなさい。お疲れ様でした」

ああ、でも。

落ち着くなあ。

俺は銃を突き付けられたり緊急発信をしたりして、なんだかんだで疲れていた。だからこうして後藤さんに『おかえり』って言われたら、日常に戻って来られたようでとても安心できた。

情けないよな。

「報告することと言うのは、倉田さんのことなんだけど。まずは今回のことについて七井君から報告を聞いてもいいですか」
「はい」

俺は倉田さんと会ってからのことを詳細に報告した。そして最後に、個人的な感想も付け加えた。

「事実は以上のとおりです。あと、気になっていることが幾つかあります」
「うん。何?」
「気になっていることは、幾つかあるんですが、それはつまり、倉田さんはジェリー・ジョンだったんじゃないかってことなんですけど」
「ん?」
「こんなこと言って申し訳ありません」

ジェリー・ジョンは裏切りのプログラムだ。部隊の間でそう呼ばれているが、愛されている訳ではない。

「凄いね。それ、大当たり」

後藤さんは困ったように笑った。

「そうですか」

なんだか安心した。安心したけど、ちょっと納得できないこともある。総合的に判断すればそのとおりだけど、所々、説明できない部分もある。

「あの、ちょっと質問してもいいですか」
「うん」
「倉田さんが持ち込んだ武器は本物でしたか」
「空砲だよ」
「ユズとヨルも仲間ですか」
「二人には訓練用の発信で現場に行ってもらったけど、計画には入ってなかったんだよね。あれはちょっと焦ったな」

後藤さんは困ったように笑った。

「木邨さん、気付いてましたよね」

木邨さんを見ると、当然のように「うん」と言って頷いた。

「それだと納得できます。いつ気付いたんですか」
「疑ったのは、倉田さんの年齢を聞いた時かな。32歳なんてあり得ないから。ああいう悪ふざけは趣味が悪いですよ」

木邨さんは、責めるように後藤さんを見た。

「あれは倉田さんのアドリブだよ」

ああ、内心で俺をからかっていたってことか。

「本当は何歳なんですか?」
「たしか七井君と同い年だよ」

26歳だ。

それならまだ分かる。

「ずっと疑ってたし、他にも怪しいところはあったけど、確信したのは銃が空砲だったからだね。敵地に乗り込むのにあんなもの持ち込んで、なんのメリットもないから」

なるほど。

さすが木邨さん。

「それでなんとなく分かりました」

倉田さんは武器を持ち込んで何かしようとしたのではなく、俺を騙して何かする為に送り込まれただけだったのだ。訓練だったのか試験だったのかは分からないけど。

木邨さんが偶然居合わせてくれたおかげでかなり助かった。俺だけだったらジェリー・ジョンをサーバー室まで侵入させていたに違いない。

まあ、でも、今回はそれで良かったのかもしれない。こういうことは偶にある。まんまと成功してしまったのでは面白くない。

俺ではなく、おそらく倉田さんに切っ掛けがあるのだろう。

例えば腕試しとか。

新しい作戦や武器の試験運用とか。

「倉田さんは、一部への異動希望でも出してたんですか?」

一部に異動する為には技能、知識、経験が問われるし、それを見極めるのはとても難しい。実地訓練より勝るものはない。

俺が尋ねると後藤さんは笑った。

「逆だよ。倉田君は二部に所属している隊員でね、ずっと前から内勤にして欲しいって言ってるんだって」

そういうこともあるのか。

木邨さんも面白そうに「へえ」と言って笑った。

二部といえば6人程度の部隊を組んで物資を輸送したり支配地域の地図を作ったりしているところだ。専門知識を持った技術者などがよく配属されるが、戦闘行為がないとはいえ、内勤とは程遠い業務ばかりと聞いている。現場主義の泥臭くて鉄臭い職場らしい。

確かに彼らはいつでも異動したがっているが、異動希望が通った試しなどないのが現実だ。

しかしそれと今回のことにどんな関係があるのだろうか。

「それで、倉田さんは異動できそうなんですか?」

後藤さんはちょっと困ったように眉尻を下げた。

「モニターしてみる?」
「え?」
「まだユズとヨルに説明してないから。本当に拷問しているかも」
「え……」

後藤さんはキーボードを叩いて映像の一つを切り替えた。画面の真ん中にはユズが立っているのが見える。その影に倉田さんが転がっているようだ。

『……だからキライなんだよ。鼻を明かしてやろうと思ったのに』

倉田さんの声だ。

意識は取り戻したらしい。

『そう。でも貴方は捕まった』
『ああくそ、あいつのせいだ。キムラってヤツ』

倉田さんは俺と話していた時とは全く別人になっていた。

『あいつこそ二部に異動させろよ。あんなの経理にいらねーよ。アレは反則だろ』

木邨さんのことを罵倒しているみたいだ。

木邨さんは涼しい顔で笑みを浮かべてそれを聞いていて、ちょっと怖かった。

『まあ大体のことは分かりました』
『分かってねーだろ!』

ユズにも突っ掛かっている倉田さんは、なんだか頭が悪い男みたいに見える。話した時には人間味があって礼儀正しくて一般人にしか見えなかったのに、これでは丸で別人だ。

『データを盗めれば内勤にしてくれるって約束だったのに、台無しだ!』
『そんなことで異動できるんですか?』

ヨルは心底不思議そうに尋ねた。

希望通りに異動できたら、俺達は皆失職するだろう。こんな仕事はない方がいいと思っているからだ。研究所の学者達は例外かもしれないけど。

「ユズとヨルにもバレてるみたいですね」

三人のやり取りを見て木邨さんが言った。

「異動はできそうにないですね」

俺が言うと後藤さんは微笑んでモニターを切り替えた。

「とにかく、こういうことでした。嫌な役回りをさせて、ごめんね」

後藤さんは謝ったけど、謝る必要なんてないと思った。倉田さんが異動したがって、こんな回りくどい方法でその適正さを図ろうとした組織の方がどうかしている。忙しいのに付き合わされたユズやヨルだって迷惑だっただろう。

「勉強になりました」

俺が言うと、後藤さんは申し訳なさそうに笑った。
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HENRI LE ROUX

HENRI LE ROUX
アンリ・ルルー
タブレット詰め合わせ

ノワール シニャチュール
ショコラ・オ・レ

アンリ・ルルーのタブレット。ダークチョコレートとミルクチョコレートの詰め合わせで、ルーブル美術館展のグッズ売り場で販売されていたのでつい購入。

ダークチョコレートの苦味と酸味のある上品な香りの素晴らしさと、ミルクチョコレートの柔らかい甘さのバランスの良さが堪らない。後味が香ばしくてとてもすっきりして食べやすい味わい。

フェルメールの作品である天文学者をイメージしたパッケージらしく、アンリ・ルルーのレトロな色合いとマッチしていてカッコいい。パッケージの表にはLOUVREの名前が入っている。
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