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Forget You/Cee Lo Green

※和訳の名を借りた妄想
※直訳に近い
※歌い手は男で、ある女の子に惚れているが、友人がその女の子とドライブしているのを目撃してしまう




『Forget You』


I see you driving 'round town
With the girl I love and I'm like,
Forget you!
Oo, oo, ooo
てめぇ、ドライブしてただろ
俺の好きな子と
だから俺は、なんつーか、
てめぇなんかどうでもいい!
I guess the change in my pocket
Wasn't enough I'm like,
Forget you!
そうだな、きっと、
俺のポケットの小銭が少なかったんだな
俺は、なんつーか、
てめぇのことなんかもう知らねぇ!
And forget her too!
あとあの女のこともな!
Said, if I was richer, I'd still be with ya
もしだよ、
もし、俺がもっとリッチだったらさ
まだ一緒に居られたのか
Ha, now ain't that some shit?
(ain't that some shit?)
ハッ、それってなんかクソだよな?
And although there's pain in my chest
それで、胸は痛むけどさ
I still wish you the best with a...
これからも、お前らには、お幸せにって…
Forget you!
Oo, oo, ooo
言う訳ねぇだろ!

Yeah I'm sorry, I can't afford a Ferrari,
ああそう、悪いけど
ぼくはフェラーリなんか持てないよ
But that don't mean I can't get you there.
でもそれで、君をどこにも連れてけないってこともないじゃないか
I guess he's an Xbox and I'm more Atari,
差し詰めあの男は新型のXboxで、
ぼくはダサいAtariだろうね
About the way you play your game ain't fair.
それで、君は君の好きに遊ぶけど、
フェアじゃないよ

I pity the fool that falls in love with you
お気の毒様
君に惚れたおバカさん
(Oh shit she's a gold digger)
(クソ、あの女は金目当てだ)
Well
ええと、それから
(Just thought you should know nigga)
(お前も知ってんだろ)
Ooooooh
I've got some news for you
良いことを教えてあげる
Yeah go run and tell your little boyfriend
そうだ、
君の可愛い彼氏のところに行って教えてやんな

I see you driving 'round town
With the girl I love and I'm like,
Forget you!
Oo, oo, ooo
てめぇ、ドライブしてただろ
俺の好きな子と
だから俺は、なんつーか、
てめぇなんかどうでもいい!
I guess the change in my pocket
Wasn't enough I'm like,
Forget you!
そうだな、きっと、
俺のポケットの小銭が少なかったんだな
俺は、なんつーか、
てめぇのことなんかもう知らねぇ!
And forget her too!
あとあの女のこともな!
Said, if I was richer, I'd still be with ya
もしだよ、
もし、俺がもっとリッチだったらさ
まだ一緒に居られたのか
Ha, now ain't that some shit?
(ain't that some shit?)
ハッ、それってなんかクソだよな?
And although there's pain in my chest
それで、胸は痛むけどさ
I still wish you the best with a...
これからも、お前らには、お幸せにって…
Forget you!
Oo, oo, ooo
言う訳ねぇだろ!

Now I know, that I had to borrow,
Beg and steal and lie and cheat.
分かってる
金を借りて、無心して、返さなかったり嘘ついたりインチキすれば良かったよ
Trying to keep ya, trying to please ya.
君を引き留めて
喜ばせたかったらね
'Cause being in love with your ass ain't cheap.
君に惚れると金がかかる

I pity the fool that falls in love with you
お気の毒様
君に惚れたおバカさん
(Oh shit she's a gold digger)
(クソ、あの女は金目当てだ)
Well
ええと、それから
(Just thought you should know nigga)
(お前も知ってんだろ)
Ooooooh
I've got some news for you
良いことを教えてあげる
Ooh, I really hate your ass right now
あぁ、
今は君のことを見ると虫酸が走るよ

I see you driving 'round town
With the girl I love and I'm like,
Forget you!
Oo, oo, ooo
てめぇ、ドライブしてただろ
俺の好きな子と
だから俺は、なんつーか、
てめぇなんかどうでもいい!
I guess the change in my pocket
Wasn't enough I'm like,
Forget you!
そうだな、きっと、
俺のポケットの小銭が少なかったんだな
俺は、なんつーか、
てめぇのことなんかもう知らねぇ!
And forget her too!
あとあの女のこともな!
Said, if I was richer, I'd still be with ya
もしだよ、
もし、俺がもっとリッチだったらさ
まだ一緒に居られたのか
Ha, now ain't that some shit?
(ain't that some shit?)
ハッ、それってなんかクソだよな?
And although there's pain in my chest
それで、胸は痛むけどさ
I still wish you the best with a...
これからも、お前らには、お幸せにって…
Forget you!
Oo, oo, ooo
言う訳ねぇだろ!

Now baby, baby, baby
Why d'you wanna wanna hurt me so bad?
なあ、ねぇ、ねぇって、
君はさ、余程ぼくを傷付けたいの?
(So bad, so bad, so bad)
(酷く、酷く、傷付ける)
I tried to tell my momma but she told me
"This is one for your dad"
ママに言ったら
「お父さんに聞いてみたら」って
(Your dad, your dad, your dad)
(お父さんに)
Yes she did
そう、ママはそう言った
And I was like
そうしたらぼくは、なんかね、
Uh! Whhhy? Uh! Whhhy? Uh!
Whhhy lady? Oh! I love you oh!
I still love you. Oooh!
おい! なんでだよ!
なんで?! ああ!
なあ、なんで女って!
ああ、もう! 愛してるよ!
今も君が好きだあああ!!

I see you driving 'round town
With the girl I love and I'm like,
Forget you!
Oo, oo, ooo
てめぇ、ドライブしてただろ
俺の好きな子と
だから俺は、なんつーか、
てめぇなんかどうでもいい!
I guess the change in my pocket
Wasn't enough I'm like,
Forget you!
そうだな、きっと、
俺のポケットの小銭が少なかったんだな
俺は、なんつーか、
てめぇのことなんかもう知らねぇ!
And forget her too!
あとあの女のこともな!
Said, if I was richer, I'd still be with ya
もしだよ、
もし、俺がもっとリッチだったらさ
まだ一緒に居られたのか
Ha, now ain't that some shit?
(ain't that some shit?)
ハッ、それってなんかクソだよな?
And although there's pain in my chest
それで、胸は痛むけどさ
I still wish you the best with a...
これからも、お前らには、お幸せにって…
Forget you!
Oo, oo, ooo
言う訳ねぇだろ!

オットー ルフォルツァント/偏向フレンドシップ

ピノが下級生と食事をしているのを見て、この人の本質はここにある、と僕は思った。

微笑の影にサディスティック。

美貌の艶はバイオレンス。



【偏向フレンドシップ】



「家族以外とキスしたことある?」

ピノが言った。

僕には彼の暇潰しがよく分からない。ピノは天才だから努力の形もその成果も規格外だ。僕達がチョコレートを一粒いただく間に、ピノは逆立ちで階段を昇っている。

「ありません」、と恥じらいながら答えるほかなかった。

ピノと同室になって良かったなと思うことは、ピノが規格外の天才で一緒にいると優越感を覚えることと、ピノが破天荒な優等生で一緒にいると新しいことをたくさん覚えられることだ。十年かけても得られない経験とユーモアを、この人はたった一月で僕に与えた。

ピノの顔に浮かんだ不謹慎な微笑に、僕は顰めて悦服した。
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シバ/観測所

嘘をついてはいけない
しかしながら
目に見え耳に聞こえる事実は
現実には程遠い



「あのー、砂漠は初めてですか」

ヒューストンの声はやはり若い。大戦のことを話した口振りから30歳以上だと思ったが、声だけならば10代の少年のようだった。

「ええ、初めてです。砂には本当に困りますね」

嘘だ。

兵器に対する規制調査の一環でここへも来たことがある。砂漠の観測所はここの他に4局あったが、そのうち3局に行った。

砂漠にテントを張って寝泊まりしたこともある。

「そうですよねー」

ヒューストンは困ったように笑った。

「ヒューストンさんは、ずっとこちらで生活を?」
「長くはないんですけどね。観測所が閉鎖になるってゆうんで、その片付けで派遣されたのが最初です。気付いたら取り残されて、いま一人でここに居るんですよ」

男が何を言ったのか、俺は理解できなかった。

『取り残されて』?

それが本当なら何故俺達に助けを求めない?

「はは、なるほど。それはご苦労されましたね」

何かの比喩表現だと解釈して俺は笑ってやった。ヒューストンも破顔した。

この男が分からない。

何かが食い違う。

ちぐはぐさ。

危険地観測所は、終戦を迎えてからは軍事利用が規制されて予算が付かず、殆んどが閉鎖を余儀なくされた。

ここも閉鎖したとばかり思っていたがこの男がここで暮らしているから本当のところがどうか分からなくなる。事実上は閉鎖しているのだろうが資料や設備はまだ管理されている。

閉鎖したのに働いている人間。

彼は一体誰なんだ?

動力設備が正常に運転していることが丸で異常なことのように、薄汚れた内装の上を清浄な冷風が撫でている。

何かが食い違う。

この男がメンテナンスしているのだろうか。研究所とは無関係なような顔をしているが、無関係な筈がないのは俺がよく知っている。こんな場所に施設を見付けるだけでも苦労するのに、この男は設備を利用して生活しているのだ。

ヒューストンはある扉の前で足を止めた。

「あの、こちらが居住区です」
「おじゃまします」
「水を用意しますね」

居住区は他の場所と色彩が変えられており多少は過ごしやすく工夫されている。壁紙が貼られて模様を作り、アンティークな家具は自然な木目調のもので、そして壁には額縁に収まった淡い色調の絵画が掛けられている。

ヒューストンは使い込まれた戸棚からガラスの容器を出して部屋の奥の方へ入って行った。

それを見送ってから俺はレルムを見る。

「何があったんだ」

俺が尋ねると、レルムは俺の目をじっと見返してから首を傾げた。加えて「なんのことですか」と答えた。外見では純真な子供のように見えるから問い質すのが悪い気がする。

そういう仕草、どこで覚えるんだろうな。

「叫び声が聞こえたから俺はここに来たんだ。叫んだのは本当にあの男か?」

「はい。叫んだのはヒューストンさんです」とレルムは言った。その声に戸惑いも怯えもないから俺にはその状況が少しも伝わってこない。

あんな声、普通じゃない。

それがレルムには分からない。

「僕の腕を掴んだんです」
「うん。それで?」
「それで、ヒューストンさんは叫んだんです」
「お前が何かしたのか」
「いいえ、何も」

そんな訳がない、とは言えなかった。

レルムが、『腕を触って叫んだ』と言うのならばそれは事実なのだろう。レルムも嘘は吐くが目的のない嘘は吐かない。人間に限りなく近いレルムの、それは超え難い人間との境界だった。

「何か分かったら、教えるんだよ」

俺が諭すように言うと、レルムは「分かったこと、あります」と答えた。

それが嘘ではないという確信がある。

でも俺はレルムの言葉が現実を表現するのに十分だとも思っていないから、レルムのことや表情から分かることよりもヒューストンの言動を思い起こした。初めて会った時、初めて話した時、ここまで案内する間、それがどんなだったか。

レルムが次の言葉を述べる前にヒューストンが現れた。

「お待たせしました」

ヒューストンは大きめのボトルに水をなみなみと入れて持って来た。少し重たそうに抱えるように持っている。そしてテーブルにグラスを二つ置いて、「どうぞ」と穏やかに勧めた。

この水は毒か?

きっと違う。

「レルム、飲むか?」

俺が尋ねるとレルムは首を横に振った。

「ありがとうございます。いただきます」と言って、俺はコップに水を注いで飲んだ。冷たくて臭みのない綺麗な水だった。

「資料なんですけど、見て行かれますか」

俺が水を飲むのを見てからヒューストンは小さな声で尋ねた。

小さな声。

心細い声。

ああ、そうか。

「はい。ぜひ」

俺が答えるのを聞いて、ヒューストンは「少し休んだらご案内します」と言って微笑んだ。

ああ、そうか。

俺はこの男にある違和感の原因に漸く気付いた。
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Pralinique de Bruges



Pralinique de Bruges
プラリニック ド ブルージュ

ミルクチョコレートはとことん甘いけれどビターチョコレートは苦味の中に華やかなチョコレートの香りがあって、夏に食べてもしつこく感じない。

特にオレンジは美味しかった。

キャラメルは口の中いっぱいに広がって、それだけで朝食のかわりになるくらいボリュームがある。
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Pralinique de Bruges

Pralinique de Bruges
プラリニック ドゥ ブルージュ

ショコラを30粒近く入れてくれているのだけれど、箱に乱雑に入れていて中でぐちゃぐちゃになっているのが残念なところ。
味はベルギーの伝統的なチョコレート菓子らしい味わいで、少しバターっぽさが強い。

とても甘い。香り付けは強くない。
ひと粒が大きいのでいくつか食べると満足できる。形から味を想像しにくいのだけれど、外見は味を裏切らない。ミルクチョコレートだなと思ったらミルクチョコレート、ナッツだなと思ったらナッツ、甘めのガナッシュだなと思ったらガナッシュ。

ひと粒かふた粒を、午後のコーヒーや紅茶と楽しむにはいいチョコレートブランドかもしれない。
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モンハン学園/貴公子の瞳に宿る熱

昨夜はよく眠れなかった。ケルビを好きになってから僕は寝付きが悪くなってしまった。昼間うとうとしてしまうのも、恋煩いと呼ぶのだろうか。




【貴公子の瞳に宿る熱】




学校はいつもと同じ。ここに居る人は増えたり減ったりしているのだろうけれど、きっと『学校』は10年前も20年後も変わらず『学校』であり続ける。

僕の恋も誰かの恋が始まったり終わったりすることの中に含まれているのかな。

哲学、みたいなものを感じる。

「おはよう、リノ」
「おはよう」
「顔色が悪いな。具合が悪い?」

アグナコトルの鋭さと優しさに恥ずかしいような喜びを覚えながらも、彼がケルビに恋していることを知っている僕は不思議な気持ちになった。アグナコトルの優しさに下心がないことを尊敬する反面、却って嘘っぽいとも思う。

ごめんなさい。

僕が捻くれているだけです。

「ありがとう。大丈夫だよ。朝が弱いだけ」

僕が答えるとアグナコトルは優雅に笑んで「そう。良かった」と言った。

彼が“王子様”とか“貴公子”とかいうあだ名を付けられて、大勢のファンをつかまえていることにも納得だ。他校生にも人気があると聞いたこともある。

「授業のノートならいつでも貸せるから、具合が悪くなったらちゃんと休むんだよ」

アグナコトルはそう言って僕の頭を撫でて自席に着いた。

近くにいた同級生が「憧れる」「嫌味じゃない」「恋人にしたい」と口々に言うのが聞こえた。たぶんアグナコトル本人にも聞こえていると思うけれど、彼らにとってはその方が良いのかもしれない。

僕なら、好きな人にそんなことは言えない。

情けないけど僕は人生で一度も人を好きになったことがなかった為に、今でもまだ告白という深刻な課題に及第したことがないのだ。

採点基準が分からない。

合格基準が分からない。

応用問題にも基礎問題にさえも答えられる気がしない。

告白している時にくしゃみすれば減点されるのだろうか。

悩ましい。

そうだ、僕は毎夜、ケルビに想いを伝える妄想をしては寝不足になり、現実にはケルビとよく話せてもいないのに、ケルビが良い返事をくれたら僕達はその後どうなるのかなどといった根拠のない皮算用をしている。ケルビに知られたら、というより誰かに知られたらきっと自己嫌悪と羞恥により登校拒否することになるだろう。

ケルビと話したい。

もっと僕のことを見て貰いたい。

アグナコトルみたいにはできないのだから、それは僕なりのやり方で。

「あ、そうっす。すんません」そんなことを電話で通話しながら教室に、ケルビが、来た。

朝からちゃんと来るのは数日振りだ。

教室がそわそわし始めた。

「ちゃんと来てます。ホントっす」「モチロンっす!」「はい。失礼します」そう言って通話を切るまで、おそらくクラスの半分以上の人間がケルビに注目していた。

そのうちの更に半分くらいは、ケルビに話しかけるタイミングを探っていたと思う。

僕がそうだ。

「おはよう、ケルビ」

口火を切ったのはアグナコトルだった。

「おう。おはよう」

ケルビが返事して、アグナコトルは僕にしたのとは全く温度の異なる笑みを浮かべた。熱い、欲望の宿った瞳の中に、僕には焔が渦巻いているのが見える。

アグナコトルは「ははは」と笑った。

「時間割は分かる? 教科書がなければ俺のを貸すし、そうであれば俺の隣の奴と席を代わって貰おう。俺は担任にお前のことを頼まれているし、お前の為なら進んで力を貸すよ」
「悪いな」
「それで。教科書は?」

アグナコトルはぐいぐいケルビに近付いて、机の中を覗き込む勢いだ。

隣の席の人が羨ましげに二人を見ている。

僕もあんな顔をしているに違いない。

「買って貰ったんだけど、重くて持ってくんのだりぃんだよな」
「いいよ。俺のを貸すから」
「いらねーよ」
「何故?」

アグナコトルは少し怖い顔をした。

目の奥で赤く揺らめくものが見えた。

恋の火焔。

アグナコトルの炎はきっと彼自身にも制御不能の恋心と支配欲の業火だ。熱く滾って身を焦がし、冷めてもなお身の内で燻る。彼は苦しそうな顔でその炎を愛でる。

「教科書借りても、俺、お前に返せるもんがねえから」

ケルビはそう言ってアグナコトルを手で払う仕草をした。

しかしアグナコトルはめげない。

「貸し借りなしで良いよ」
「俺が嫌なんだよ」
「友達に頼るのを借りを作るとは言わないよ」
「俺が嫌だっつってんだろ!」

ケルビは唸った。

それがアグナコトルに通用する訳がないことは、おそらくケルビを含めた全ての者が気付いていただろう。ケルビはそれを分かったうえでアグナコトルを威嚇したのだ。

ただで負けるのは許せない、その気持ちは俺にもある。

アグナコトルはケルビの威嚇を相手にしないだろうと俺は思った。しかし現実は違った。

「ごめん。しつこくしたね。必要だったらいつでも頼っていいから」

アグナコトルは逃げた。

僕には見えた。

恋の火焔。

アグナコトルは髪の赤を鮮やかにして、恋の火焔に焼かれながらなお顔には笑顔を見せて、地獄のようなその場所から這い出るのを拒否した。焦熱からは逃れられない。彼がその秘めた想いと決別しない限りは、逃れられない。

僕はアグナコトルの熱を、少し心地よく思った。
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グッド・バイ(太宰治)

※グッド・バイの続きを妄想




田島が女と次々に手を切るのを見て、キヌ子の田島への印象は変わった。

田島は昔から女を侍らすのが好きな男で、鼻持ちならないと思うことが多かったが、その女達に田島が深く愛されているのを間近に見て、少しは彼女らの気持ちに同情が芽生えた。

田島には女を見る目がある。

最後の女などは中々いい女で、キヌ子は思わず「奥さんにしちまえば、いいのに」と言った程だった。

そして今日は、田島が今までの礼だ、と言ってキヌ子を食事に連れて来ていた。

キヌ子が余りに食べ過ぎるので、近頃は食事に誘うこともなく、闇屋にするみたいにさっと金だけ渡して別れることが多かった。

自分のしたことは闇屋と変わりないか、と田島は思った。

女達を騙した。

それもこんな意地汚い下品な女で。

「本当に好きなだけ食べるわよ」

キヌ子はメニューを見ながら店員に一通りの注文を済ませたうえで、そんなことを言った。まだ足りないらしい。

「いいとも」

田島は力なく答えた。

良くはないが、仕方ない。この女は史上最悪の女だが、愛人と別れる為には必要な女だったのだ。手切れ金を渡しても不満そうな顔をされた時、キヌ子が気の利いたことを言って、女が身を引いたということもあった。

「ふふん。女がみんな居なくなったんで、こんどは寂しいのかしら。自分勝手な男ね」

キヌ子は早速届いたカニ玉を口に放り込みながら言った。口の中のに黄色いものが見えている。

本当に下品な女だ。

「おれの気持ちは、お前にはわからないさ」

田島はキヌ子の言う通り、たしかに少し寂しさを感じていた。

女が居なくなったからではない。

自分の老いを実感させられたからだ。

「やあね、老けこんで」

キヌ子は、田島がちょうど気にかけていた弱いところを突いてきたので、さすがに田島は我慢ならなくなって声を荒げた。

「ひとは誰でも老ける!」

キヌ子はそれを聞いてからから笑った。

「だから貴方も老けたって言ったのよ」

キヌ子の鴉声が田島の弱った心に追い打ちをかけた。田島は「それはどうも」と嫌味に答えた。

いつもこうだ。キヌ子と会うと必ず厭な思いをする。仕事のこと以外では口をきくものかと思っても、けっきょく口車に乗せられて好き放題言われてキヌ子だけが笑っている。

見た目だけは、こんなに、良いのに。

田島は固く口を噤んで紹興酒を手酌で飲んだ。

「今日はお金はケチしないのに、言葉はケチなのね」
「好きに食べてかまわんから、頼むからこれ以上は何も言うな」

田島は酒をどんどん飲んで、直ぐに店員に同じものを注文することになった。ひとりで3合程は飲んだか。

キヌ子は田島を一瞥して大きな溜め息を吐いた。

「わたしは一応褒めたのよ」
「なんだって」

田島は、冗談は止せと目で訴えた。

口にしてキヌ子に言い返されるのが怖いので、はっきりとは伝えられないだけだ。若しくは、キヌ子が相手でなければこれは笑い話しであっただろう。

「闇屋をやっていた頃はいまよりうんと女に好かれていたじゃない。それに男にも好かれていたわ。あの頃にこんなこと頼まれていたら、わたしだって断ったわ」

キヌ子は口の中にピーマンと豚肉を見せながら言った。

田島は項垂れて「そうかい」と答えて、たしかに自分は老けたよ、とも思った。キヌ子の言い草は強ち間違いではない。むしろその通りの図星だから田島も余計に老け込んで見せるしかない。

キヌ子は店員が持ってきた紹興酒を受け取ると田島の杯に注いでやった。

落ち込む田島を可愛く思ったのだ。

「お前に言われるのでも、案外嬉しいもんだよ」
「ふふん。当たり前よ」

今度は田島がキヌ子の杯に紹興酒を注いだ。

田島は、馬鹿にしてやがる、と内心で思った。

今日で最後だ。おしまいだ。今日こそ言ってやる。この女にこそ言いたい言葉だった。他の女との別れなど小さな問題だ。だから腹を満たして、気持ちよくなってもらってから、言ってやる。

グッド・バイ。
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