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WAIT 'TIL YOU SEE WHAT'S NEXT

WAIT 'TIL YOU SEE WHAT'S NEXT


※聞いて文字起こししたので実際の歌詞とは異なります
※間違いは教えていただけると助かります




Monday comes, and it feels like the end of the line
月曜になると、行き止まりみたいに感じる
There's nothing to say
話すことなんかない
There's nowhere to go
行き場がない
There's no one to listen
みんな自分のことばかり

Monday comes, I decide to reclaim what is mine
月曜になると、自分を取り戻そうと決意する
In spite of myself
理由はないけど
I'm dying to know
俺は知りたいんだ

What's across the road?
道の向こうには何がある?
What's behind the wall?
壁の向こうには何が隠れてる?
What's around the corner?
その角の向こうには何がある?
And what will it take 'til I find my way?
自分の道を見付けるまで、
一体何があるんだろう
Will it be today?
それは今日?
Will it be too late?
もう手遅れ?
Wait 'til you see what's next
次に何が起こるか見るまでは、待っていて

Just beyond the hill
その丘の向こう
Just along the river
その川の先
There's something that's pulling me out the door
ドアの向こう側に俺を連れ出してくれるもの
Try for something more
もっと試してみよう
Try for something great
きっと素晴らしいことがあるから
And wait 'tll you see what's next
次に何が起こるのか、わかるまで待とう

Step by step
ひとつひとつ
When it's hard just to see or to hear
ただ見たり聞いたりするのさえ難しい時
A ripple of doubt
懐疑の連鎖
A slack in the pace
平和ぼけ
A small hesitation
ためらい

Step by step
一歩一歩
Then at last
最後に
When the fog starts to clear
霧が晴れて
I open my eyes
目を開いて
I'm ready to see
見届ける準備はできている

What's across the road
その道の向こうには何があるのか
What's behind the wall
その壁の向こうには何が隠れているのか
What's around the corner
その角の向こうには何があるのか
And what if it's not what I thought I’d see
それが見えていたものとは違うものでも
What if it’s not for me
俺向きじゃなくても
Chalk it up to faith
信じられるものを見つけて
And wait 'til you see what's next
だから、次に何があるか知るまでは待っていて

What's beyond the hill
ちょうどその丘の向こう
What's along the river
ちょうどその川の先
You thought that you knew how the path would turn
君はその道がどう曲がっているか知ったつもりで
Something more to learn
もっと知りたいこと
Open up the gate
ゲートを開けて

And wait for the story you've never see
今まで見たことがないような物語を待っていて
Wait for the blue on the bough
その枝の青い鳥を待っていて
Wait there's a flicker across the screen
スクリーンを照らす煌めき待っていて
Coming soon
直ぐに来る
Coming now
今直ぐにわかる

Just across the road
その道の向こう
Just behind the wall
その壁の向こう
Just around the corner
その曲がり角の向こう
A new bit of history there to write
新たに刻まれる歴史のかけら
Something you all might underestimate
それが見くびっていたものでも
But wait 'til you see what's next
次に何が起こるのか、知るまでは待っていて

Just beyond the hill
その丘の向こう
Just along the river
その川の先
We're perched on the edge of the great abyss
俺たちは大きな奈落の淵に佇んで
What you can't dismiss or anticipate
それは避けられない、予測不能
Just wait
ちょっと待っていて
Wait 'til you see what's next
次に何が起こるのか、わかるまでは待っていて

Just across the road
Just around the corner
Wait 'til you see what's next

Just across the road
Just around the corner
Wait 'til you see what's next

Just across the road
Just around the corner
Wait 'til you see what's next

ラミン・カリムルー in コンサート

ラミン・カリムルー in コンサート
Ramin Karimloo in Concert Japan
東京国際ホールA
2015/12/17 19:00〜


なんて可愛らしい人なんだろう。
フォークソングを歌っている時の目が好き。
ちょいちょいするウィンクが好き。
あと鼻も好き。
でも目元が一番好き。


以下セットリスト。
貼り出されていたので写メりました。
それとちょっとした感想。



▼Empty Chair at Empty Table
(ミュージカル『レ・ミゼラブル』より)
まさかの。マリウス。
しっとり歌いながら始まりました。
とてもいいお声。

▼Anthem
(ミュージカル『CHESS』より)
意外と続くミュージカルナンバー。

▼Broken
(ラミンオリジナル?)
フォークソングが始まった。
バイオリンとかピアノを入れるハイテンポのフォーク大好き。
ラミンがこういう歌を歌うのが嬉しい。

▼Oh What a Beautiful Morning'
(ミュージカル『オクラホマ!』より)
力強くて、気持ちよさそうに歌う。
ラミンが可愛い。

▼Constant Angel
(ラミンオリジナル?)
みんなこの曲好き?
って感じに始まるオリジナル曲らしいもの。
全然知らないけど、私はラミンが好きだということは確認できる。

歌が終わると普通のテンションでさっぱり話すラミンが可愛い。

▼Traveler's Eyes
(ブロードグラス?)
"We will fall, We will rise"ってフレーズがけっこう好き。
私たちは落ちるけど、上がる。
躓くけど、起き上がる。
絶望するだろうけど、必ず持ち直す。

▼Love Never die
(ミュージカル『Love Never Dies』より)
平原綾香さんが登場。
平原さんのキャラクターが面白くて会場が盛り上がる。
平原さんソロ。
仕方ないけどカラオケ音源。

▼Once Upon Another Time
(ミュージカル『Love Never Dies』より)
ラミンがお姫様扱いするのを微妙にかわす平原さん。
平原さんとデュエット。
歌声の美しさよ。

▼Till I Hear You Sing
(ミュージカル『Love Never Dies』より)
怒濤のラブネバタイム。
生で聞くことができて幸せです。
ラミンの為の曲だということを思い知らされる。
心地よい音域。


【幕間 break time】


▼Music of the Night
(ミュージカル『オペラ座の怪人』より)
割とラフに入る。
女優さんがいないのが残念。

▼The Road to Find out / Wild World
フォークソングタイム。

▼Losing

▼Bring Him Home
(ミュージカル『レ・ミゼラブル』より)
始まる前からBGMとして前奏が流れていた。
そんな名曲の扱い方に笑う私。
(ファンの皆さんは感動してそれどころではなかったでしょうけれど。)

▼Jupiter
平原綾香さんが再登場。
平原さんソロ。
なんか、なんでか、個人的に、年の瀬を迎えたっていう気分になりました。

▼Somewhere
(ミュージカル『ウエスト・サイド物語』より)
平原さんとデュエット。2曲目。
息ぴったり。
ラミンを見つめて微笑む平原さんの表情が素敵。
そんな平原さんを見つめる優しいラミンの目が好き。

▼Wagon Wheel
フォークソングが本当に好きなんだろうな〜と思いながら聞く。

▼追加曲
歌詞をど忘れしたらしく照れるラミン。
可愛らしい。
愛嬌というものの体現。
それがラミン。

▼Do You Hear The People Sing?
(ミュージカル『レ・ミゼラブル』より)
ラミンはやっぱりアンジョルラスだと思ってしまう。
バルジャンラミンは、声だけなんだ。
アンジョルラスラミンは力強さがある。
かっこいい。

▼Reminder 歌詞
日本語を一生懸命歌うラミンの愛らしさ。
城田優さんがいたらもっと良かったのに、と思うけど、呼ばれても戸惑うだろうな、と思う。


【アンコール encore】


▼I Wish The Wars Were All Over
ラミンって真面目でいい子だなー、という気持ちになる。
平和を願う曲。

▼Will The Circle Be Unbroken
ひとつのマイクを囲んで交替で歌い合うので、キャンプか何かみたいで楽しくなる。
そこに混ざりたい、と思ったのは私だけではないはず。



本当に楽しい時間でした。
ラミンがいい子で、本当に明るくて、周りのひとを大切にする姿に、何か込み上げるものがありました。
自分の中の濁った部分を見直したくなる。

オペラ座の怪人から入った私としては、ラミンの歌声は、ソプラノの美しいロングトーン(顔に似合わず)が魅力だと思っていました。
また、アルトの囁くような歌い方とか、ちょっと惑わすような歌い方とか、抑えられた抑揚が徐々に高まっていく感じとか、そういうところを楽しむ積もりでした。
オペラ座の怪人のファントムを見に来ていた。
でも、それは違った。

ラミンの力強い歌声は、綺麗じゃなくても、客を魅せる為のロングトーンがなくても、ミュージカル独特の抑揚がなくても、十分訴えかけるものがありました。


ラミンがフォークソングを好きなことは、一応、知ってはいました。
でも、そこまで興味はなかった。

ラミンがフォークソングを好きな理由が、少しわかった気がします。
フォークソングには情熱や優しさがあった。
思わず一緒に歌いたくなるような、思わず手拍子したくなるような、自然な音とリズムで、心に触れるような、そういう歌がラミンは好きなんだな。
いい子だな。
私もフォークソングを好きになったよ。


私はミュージカルが好きではありませんでした。
でもオペラ座の怪人を見てから、すっかり変わったんです。

ミュージカルには、(それをわざとらしく感じて敬遠する人も多いのだけど、)夢とか正義とかロマンスとか、琴線に触れる物語がある。
はっきり言えないけど、普通の映画より、人間の魂の存在を求めているというか、感情に主題を置いていることが多い。
だって登場人物達が思ったことや感じたことを歌うんだから、そうなります。

登場人物が話しながらいつのまにか歌っていることがある。丸で感情が音楽を生み出すみたいに。
怒りや悲しみに歌が詰まることがある。音楽が感情を揺さぶるみたいに。
私はそれがとても好きです。

ブロードウェイの歌って踊るミュージカル(例えばウエストサイドストーリーとか)は、確かにビックリしちゃう人もいるだろうけど、みんな敬遠せずに、ミュージカルの良さをわかってくれたらいいなって、なんか最近思います。
ラミンには、それを伝える能力がある。

ミュージカルからフォークソングを好きになった私がいるのだから、ラミンのフォークソングからミュージカルを好きになる人がいるかもしれない。
ラミンのコンサートで、曲目の半分がフォークソングっていうのも、だから今はかまわない。
もったいない、って思わないこともないけど。
歌って欲しいミュージカルナンバーや聞きたいデュエットがたくさんあるのだけど。
それでも、ラミンが、これからも大好きなフォークソングを歌いながら、世界をツアーして宣伝するっていうのも、まあ、だから悪くないなって、ちょっと思いました。
きっとその方が自然に、優しく、ひとの魂に触れることができるのでしょう。


おしまい。

開いた口も塞がれぬ

※BL
※恋するバカと地味系優等生




俺の隣を歩く仁志をチラッと見てみる。

この同級生は平日は学校紹介パンフに載っている空想上の理想的生徒みたいにキッチリ規則通りに制服を着こなして、土曜日の今日でさえ私服なのにそこはかとなく真面目さが伝わってくる見た目をしている。

真面目ってゆーか、なんていうか。

親なら、自分の子どもがこんなにカタく育ったら嬉しいんだろうな、とは思う。だっていかにも将来は安全だ。遊び半分で大麻とか吸わないだろうし高校を中退してホストとか風俗のキャッチとかしなさそうだし警察に補導されたことすらなさそうだし。

親を泣かせたことなんてなさそうだ。

親に泣かされたことくらいはあるかもしれないが。

理想の息子。

でも俺は仁志の親ではなく彼氏である。

仁志と知り合う前の俺だったら、こんな男と二人きりで放課後を過ごすなんて考えもしなかった。

だってすげーつまんなそう。

ノリ悪そう。

仁志だって俺のことほんとは嫌いだと思う。前にそんなことを言われたし、俺みたいな軽薄そうなやつは嫌いとかなんとか。それに仁志はときどき『けーべつ』の目線を俺に寄越す。

実際、仁志はおカタい。

校則とか全然破んない。

見た目を裏切らない真面目っぷりだ。

でも仁志に告白されて、俺も好きとか言っちゃって、付き合うことになって、初めてのデートで喧嘩して、仲直りして、そしてなんだかんだで俺達はまだ付き合っている。

『俺の見た目が悪いのが、嫌か?』

初めてのデートで仁志が言った。俺はもちろん、そんなのどうでもいいって答えた、と思う。

何しろ、俺は仁志にべた惚れなのだ。

俺は女を選ぶときには本能に従うことにしている。会って話して触れ合って、イイとかワルいとか本能が感じることに従う。

仁志は俺の本能にバッチリ引っかかった。

仁志のド天然で超平和な中身を気に入っちゃった俺としては、見た目なんてどうでもいいってデカい声で主張したい。でもこうして街をぶらぶらしてっとね、ちょっと、周りの目も気になる年頃なの。ちょっとだけ、もうちょっとだけ、いい感じの服を着て欲しいっていうのは我が儘なのか?

あーでもなあー。

女に好みの服とか音楽とか押し付けられるのを嫌がるやつってけっこういるし。俺はそういうの大丈夫だけど。俺のやろうとしていることはそういう個人の押し付けと同じだ。

もし仁志にめんどくさい男だと思われて、うっとうしがられたら切ない。

俺はもう一度仁志をチラッと見た。

「どうした?」

仁志はクールに聞いてきた。

たとえば仁志が髪型を気にしてチャラチャラして女ナンパして酒飲んで「ダルーい」とか言ったとしたらどうだろう。ビックリだ。たぶん俺の本能は仁志から離れる。

「ねぇ、俺んち来る?」

俺が甘えるように言うと仁志は少し迷ってから「いいよ」と答えた。

仁志が駅でなんか買い物をする間、俺は街を歩く人を眺めていた。そして考えていた。俺と仁志はずっと同じ学校にいたはずなのになんで今になって出会ったのかとか、もっと早ければ付き合った女の数は10分の1で済んだんじゃないかとか、仁志が好きだと思う女ってどんなのだろうかとか。

若者の悩みは尽きない。

俺はけっきょく、仁志の一番である自信がないんだ。

顔を上げると仁志がいた。

「悪い、待たせて」
「べつに」

なんかふてくされた女みたいなことを言ってしまって俺はちょっと落ち込んだ。

でもいいんだ。

なんせ今日はうち、誰もいないんだから。

実は少ない脳みそで朝からたくらんでいた。家で仁志と二人きり、ちょっとエッチな雰囲気作りをしたいなと。二人の関係を一歩でも二歩でも進めて絆を深めたい。

仁志がうちに来るのは初めてではない。学校帰りにちょいちょい来たりしている。だから二人きりっていうのもこれが初めてではもちろんない。

でも俺の気持ちは全然違った。

今日は気合いがすごい。

俺は決勝戦前のスポーツ選手並みの気合いと闘志を心に秘めて、仁志を家の中にエスコートした。

「なんだ、お前か」

ビックリした。そこには、兄貴がいた。

なぜだ。

「お邪魔します。僕は野口くんと同じ学校に通っている、仁志肇と申します」

すかさず挨拶した仁志はさすがだった。このカタさ、今までうちに連れて来たことのないこのカタさ、兄貴はそれを感動の目で見つめた。

「仁志くん? はじめまして。遼太郎と友達なの? こんな素敵な友達いたっけ?」

最後は俺を見て聞いた。

『素敵な友達』

兄貴はガチでこの言葉を使った。普段の俺ならそれをぷっと笑っただろうけど、今日は違った。

俺の連れて来たやつらはこれまでだれ一人として家族に歓迎されたことがない。類は友を呼ぶらしく俺にそっくりで礼儀知らずでバカばっかりだったから。でも仁志は兄貴に笑顔で挨拶を返された。

兄貴が笑ってる。

仁志も笑ってる。

ビックリだ。

正直なところ、俺は家族との仲が微妙に険悪である。俺がバカだから。でも連れて来る友達まで嫌われるのは、それだけ俺が嫌われてるからだと思ってた。俺が嫌われてる分の余りがあいつらにもいってるんだって。

でも兄貴はいま笑ってる。

「いえ、素敵じゃないですよ。悪い人間です。すみません、最近仲良くさせていただいています」

仁志は遠慮してそう言ったけど、俺はそんな返事のひとつにも感動した。たぶん兄貴も感動してる。こんなカタくて、最高にイイ、『素敵な友達』が俺にいるなんて。

兄貴はにこにこ笑って自己紹介した。

「俺はこいつの兄の、章人です。こいつの友達じゃ迷惑かけてるでしょう。ごめんね」
「そんなことありません。僕から遼太郎くんに近付いたんです」
「そうなの?」
「はい」

ビックリした。

けっこう危ういことをさらりと言った、と思う。

なんか仁志って俺たちが付き合ってることもこんな風にさらっと言ってしまいそうだ。そうしたらどうなるんだろう。仁志はそういうこと考えないのかな。俺もそういうことは気にしない方だけど家族だけは別だ。

俺は仁志をチラッと見てみた。

仁志は見たことないような爽やかな笑顔を浮かべている。

初めて見る。こんな顔もできるんだな、と驚く俺。地味な見た目が華やかになってけっこうかわいい。こんな風にふわっと笑う仁志のことなら蛍路たちも気に入るかも。

それに加えて俺は仁志の言った『遼太郎くん』という言葉の響きにドキドキしていた。名前を呼ばれたのは初めてだった。

絆を深める計画は案外うまくいってるんじゃねーの?

「玄関先でごめんね。ま、あがって」
「あの、これ、詰まらないものですが」

あ、それは。

家の中へ案内されて仁志が差し出したのは、菓子箱だった。駅で仁志が買ってたやつ。兄貴がいると知ってた訳じゃないだろうけど用意がよすぎてちょっとこわい。絶対そんなはずないのに仁志ってこういうの慣れてんのかなとか思っちゃう。

つまり、恋人の家族に挨拶するということに。

「君って…」

兄貴は目を丸くして何か言いかけたけど口にはしなかった。

それから兄貴は仁志とおまけの俺をリビングに案内してコーヒーなんか淹れ始めた。二人きりの予定がとんだ誤算だ。

ちなみに兄貴が俺にコーヒーを淹れるなんてことは、もちろん普段ではあり得ない。

始めこそ俺の連れて来た仁志が家族に受け入れられていることが嬉しかった俺だけど、兄貴はすっかり仁志を気に入ってしまったし仁志も外交モードなのか愛想よく相手したりして面白くない。

エッチな雰囲気にはなりそうにない。

「仁志、もう部屋行かない?」

二人が盛り上がってる会話のちょっとした隙間を狙って、でも兄貴に言えずに俺は仁志にそう言った。

「なんで? 肇くんを独り占めしたいの?」

せっかく仁志に言ったのに。なんでか返事は兄貴がした。仁志も俺の肩をもってくれるつもりはないらしく兄貴のわざとらしい言い方にただくすっと笑った。

昔から俺が欲しいと思っても手に入れられなかったズルさ。兄貴は何かたくらんでるのかもしれない。

俺は兄貴には勝てない。

兄貴ってストレートだよな?

最近まともに話してないしよくわかんねーや。

「仁志は俺のダチなんだから兄貴遠慮しろよ。独り占めしたいっつったらどうなの? 悪いこと?」

こんなのつまんねー。

なんで好きなやつを家に連れてきてこんな嫌な気分になんなきゃいけないの?

「お前、気持ち悪いな」

兄貴がつぶやいた。

「すみません、遼太郎くんとは以前から約束していたんです。いま僕の方が約束を破っているんです。ごめん、遼太郎。部屋にお邪魔してもいい?」

ビックリなんだけど仁志はカッコいい。見た目からは想像できない。仁志は俺が泣きそうになることを平気な顔して言う。それがほんとにカッコいい。

なんなの?

慣れてんの?

「そうだったんだ。俺こそ引きとめて悪かったね」

兄貴はにっこり笑った。

そしてつけ加えた。

「連絡先交換しない? あとでこいつから聞いていい?」
「はい」

仁志の返答はすぐだった。なんでだよ。兄貴と二人で何話すの? せめて俺をとおして連絡とれよ。なんでだよ。兄貴もなんでだよ。くそー、なんかすげームカつく。

俺は仁志と部屋に引っ込んでからもふてくされてた。たぶん駅でほっとかれたときよりずっと機嫌がわるい。

「仁志ってさー」
「なんだ」
「俺の名前知ってたんだな」
「ああ。知ってた」

しかも笑わないし。

「兄貴と気が合った?」
「は?」
「楽しそうだったし。引き離してわるかったな」
「何言ってるんだ。俺はお前と過ごすためにここに来たんだ。ご家族には挨拶したいと思っていたから、丁度良かった。挨拶しちゃいけなかったのか?」

カタい。

ガチガチだ。

「結婚でもするみたいだな」

俺は半笑いで言った。すげー態度わるいと思うけど顔と口が勝手にやったことだから謝らねー。笑顔のやつにも態度がわるいって言葉を使っていいなら仁志だって十分態度がわるかった。だって俺はこんなに傷付いた。

仁志が何も言わないので俺は仁志をチラッと見た。

仁志は真顔だった。

なんだよくそー。歩み寄る気はないのかよ?

俺は仁志を半分睨みながら聞くことにした。

「いっこ聞いていい?」
「なんだ」
「仁志って彼女の家に挨拶とかけっこうするほう?」

「俺で何人目?」とまでは聞けなかった。

仁志は視線を下げて少し考えた。

「質問の意味がわからないから答えられない」
「は!?」
「俺からもひとつ、聞きたいことがある」
「お前が答えないなら俺も答えねー!」
「それが答えだと言うならそれでかまわない」

俺は答えてやる気なんてちっともなかった。たとえ10億円欲しいかって聞かれても、意味がわかんねーってつっぱねるつもりだった。

俺は闘志を燃やして仁志を睨んだ。

この闘志、ほんとは仁志とエッチなことをしたいとたくらんだときの使い回しだけど、いやだからこそエネルギー源は豊富にある。ちょっとのことじゃビクともしないはずだ。

仁志は俺を見た。真っ直ぐな目で。

あ。この目、あの時と一緒だ。

俺は仁志に告白した時のことを思い出した。好きなひとに好きと言ったら『俺も』って言い返してもらえる幸せを。仁志はいつでも真面目だし俺を裏切ることは絶対ないと信じられる信頼できる目をしてる。

くそー、決意が鈍る。

早く言えよ。

俺の思いが通じたわけはないけど仁志は口を開いた。

「俺のことを名前で呼ぶのは嫌なのか?」
「んなわけねーだろ!」

むしろ呼びたい。

今日初めて『遼太郎』って呼ばれたらそれがすげー心地よくて、俺も仁志をそんな気持ちにさせたくて『肇』って呼びたいってずっと思ってた。いつどんなタイミングで呼ぶか、仁志は驚いてくれるか、喜んでくれるか、そんなことが頭をぐるぐる巡ってた。

「肇……」

俺はそう言ってたぶんだけど顔を真っ赤にして仁志を見返した。

そして気付いてしまった。

俺の決意は、なんてもろいんだ。これじゃバカ過ぎて兄貴に嫌われるのもわかる。わかりたくないけどわかってしまう。自分で自分にビックリだ。

仁志も驚いた顔をしてた。

口を開けてぼーっとしてる。

俺は仁志の質問になんか『答えねー』ってすげーはっきり言ったのに、それ以上にすげー前のめりで答えてしまった。ほんとバカ。

これって、あれだ。

俺だって知ってる。

あきれてビックリ、口を閉じるのも忘れるくらいのやつ。



曰く、“開いた口も塞がれぬ”。
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愛想も小想も尽き果てる

※BL
※年下派遣社員と年上正社員
※暴行(DV)を肯定する文章があります




佐伯さんがこんな顔をするんだってことを、いったいどれだけの人が知っているのだろうか。佐伯さんの、この、胸を引き裂かれたような悲痛な表情を、どれだけの人が知っているのだろうか。

たぶん『あいつ』は、嫌ってほど知っているに違いない。佐伯さんをいたぶって傷付けたという、その男なら。

「佐伯さん、よかったんですか?」

あなたのことを好きな、俺みたいな男の家に泊まったりして、よかったんですか?

あなたの恋人は、とても怒るに違いない。あなたが何度も何度も会社を休むことになった元凶の男は、今日あなたを手放したとしても、明日はきっと力ずくであなたのことを取り戻そうとする。

佐伯さんは無気力に「うん」と頷いた。

ああ、そうか。違うんだ。

佐伯さんがあいつから離れたいのではなく、俺が佐伯さんを手に入れたいだけだ。佐伯さんはきっと殴られても踏み付けられても、離れたいほど嫌ではないから今までそいつと付き合ってきた。

佐伯さん、よかったんですか?

佐伯さんは、俺の質問に、違う解釈をしたらしい。彼の頷きが何に対してのものなのか、俺にはわからない。

佐伯さん、よかったんですか?

俺みたいな部外者にプライベートを知られて、よかったんですか?

とかね。

「佐伯さん、風呂、入ってください。あの、痛くなければ」

痛くない訳がない。

会社でいつも長袖だったのは、この所為じゃないか。

「寝ぼけてぶつけた」と言っていた、あの時の顔の傷も、割れた爪も、欠けた歯も、切れた目元も、いつも長袖で隠されていた腕中の痣も、すべてこの所為じゃないか。佐伯さんが巧妙だったんじゃない。俺が鈍感だったんだ。

佐伯さんは俺をゆっくり見た。

「じゃあ、借りようかな」

俺は思わず佐伯さんから目を逸らした。

糞、なんで。こんな時に佐伯さんを色っぽいとか思うんだろうか。誘われた、なんて最低な思い違いをするんだろうか。

「廊下出て、右側のドアです。タオルと着替え、適当に用意しますね」
「ねえ」

佐伯さんは、囁くように呼び止めた。

それは甘美な響きがした。

佐伯さんは、着替えを探す口実でこの場を離れようとした、俺のこの薄汚い下心を見抜いたのだろうか。佐伯さんは鋭いし観察力に優れているし、あり得ない話しではない。

「三波さんは、俺のことが好きなんだよね」

確かめるような言い方は、俺の心を激しく揺さぶる。

「そうですよ」
「俺、お風呂に入って大丈夫かな?」

佐伯さんは口元だけでそっと笑った。

「そんなの、佐伯さんが考えてください」

俺ははっきり自分の気持ちを伝える勇気がなくて、ごまかした。

あなたのことを、性的に魅力的だと感じているなんて、言える訳がない。はっきり言って、風呂に入った後の佐伯さんに欲情しない確証はない。それでも今は、優しい振りでもして、佐伯さんをちょっとでも長くこの部屋に留まらせようとしている。

卑怯で、最低だ。

「本当に俺のこと好きなの?」
「はい」
「会社にいる時と、俺、だいぶ違うよね。それでもいいの? いつ好きになったの?」

佐伯さんは、まだ笑っている。その表情は艶っぽいけど、不気味だ。

「俺にもわかりません。でも佐伯さんのタメ口は、けっこう好きですよ」

会社でいつも礼儀正しい佐伯さんのタメ口は、俺の心をくすぐるには十分だった。あの日、給湯室でのやり取りが致命傷になったのだ。そう、恋心が執着に変わるには、十分だった。

佐伯さんのことが好きだから、俺はきっと、佐伯さんが俺だけに笑いかけている今の状況だけでも、十分楽しい。

この独占欲を、佐伯さんにぶち撒けたい。

そして受け入れてもらいたい。

俺は自分のどうしようもない感情の行き場に気付いてしまった。佐伯さんが女性と話していると苛々する理由、佐伯さんが飲み会で酔っていると苛々する理由、佐伯さんが魅力的に笑えば笑うだけ苛々する理由、それら全部、佐伯さんが俺のことを受け入れてくれたら解決する。

「じゃあ俺と付き合う?」

佐伯さんはそう言って俺の目をじっと目詰めた。

俺はまた、目を逸らした。

なんてことを言うんだ!

俺の内心は、ぐちゃぐちゃに掻き回されて、一気に沸騰した。好意が熱くなり過ぎて、怒りにも似た感情を覚えた。

「誰にでもそんなこと言うんですか? 今の彼氏もそんな風に誘ったんですか? それとも俺のことおちょくってます?」

俺が年下だから?

俺が派遣社員だから?

どんな理由でも許せる気がしない。

佐伯さんは目を丸くして声に出して笑った。その無邪気さがさらに俺の怒りを煽る。煮え滾った感情は、俺の中にある小さな器から容易に溢れて爆発しそうなのに、佐伯さんは全くわかってない。わかってくれない。

「なんか意外。三波さんって、思ってたよりロマンチストだね。勢いで俺を抱きたいとか思わないの? それとも傷だらけの体じゃ勃たないとか?」
「好きだからですよ!」
「え?」
「佐伯さんを自分だけのものにしたいんですよ! 心も体も全部欲しいんですよ!」

傷のある体が嫌な訳ではない。

知らない男に付けられた傷や痣を見たくないだけだ。だから、さっきから目も合わせられない。男にいたぶられた佐伯さんを、想像してしまうからだ。

俺は佐伯さんの彼氏の気持ちが少しわかる。佐伯さんを殴って、わからせてやりたい、というその気持ち。

それがロマンチストなのか?

それは、俺のロマンをわかってくた、ということだろうか。

きっと違う。

きっと違う!

わかってくれよ!

俺の感情は単純なんだ。佐伯さんが好きなだけ。たったそれだけ。それだけのことなのに、佐伯さんにはちゃんと伝わらない。

わかって欲しいのに!

好きだってことを!

わかって、俺を、受け入れて、それからならどんなふしだらなことだって楽しめるから、今はただ、わかってくれよ。

ああ、だってこんなに好きだから。

こんなの駄目だ。

一緒に居るだけで十分だった一分前の自分はもう消えてしまった。

俺は悔しくて泣きそうだった。

相手にされていないから、だから佐伯さんはあんなことを言ったのだ。俺のこと、全く本気で取り合ってない。

「ひとつ、訂正していい?」

佐伯さんは尋ねた。

「はい」

何を訂正すると言うのだろう。訂正して欲しいことはたくさんあった気がするけれど、どれもきっと違うだろう。

俺は佐伯さんの手元を見て言葉を待った。

「彼氏、もう別れてる」
「あ、そうなんですか」
「それだけ? 反応薄いね」

佐伯さんは少し残念そうに首を傾げた。

だって、そんなの、俺は求めてない。彼氏がいるとかいないとか、そんなことは本質的にはどうでもいいんだ。俺の欲望を満たすには、全然足りない。

「俺、佐伯さんのこと好きです。言ったじゃないですか。全部欲しいんですよ。佐伯さんの心まで全部。心も体も全部を俺に捧げてくれないんなら、俺は佐伯さんに裸で誘惑されたって、きっと抱きたいとは思わない」

佐伯さんは言葉を失って、黙って俺のことを眺めていた。

俺はそのことを確かめて、直ぐに目を逸らした。

体の中がめちゃくちゃだ。

でも頭はそんなに狂ってない。

「だから、どうするかは佐伯さんが決めていいんですけど、俺、無理矢理何かしたりはしませんよ。風呂、入ってください。ベッドも使ってください。明日の朝にはなんか飯も作りますよ。仕事休んでもいいし、仕事行ってもいいし。この家いくらでも好きに使ってください」

何も得られないなら、それはそれでいいと思う。

佐伯さんが家に居着いて、なんとなく二人で過ごすっていうのもけっこう魅力的だ。佐伯さんが誘惑してくれなくたっていい。全部が手に入らないなら、そういう曖昧だけど愛着を感じる関係も悪くない。

そうじゃない?

俺、間違ってる?

それをロマンって呼んだらいけない?

「佐伯さん、疲れてません? ゆっくり休んでください。そういうことが、けっこう大事なんですよ」

俺はそう言って寝室に向かった。佐伯さんが着られる部屋着を探す為だ。

引き出しの中から比較的綺麗な服を引っ張り出して、ふと下着のことを考えた。流石にいくら綺麗に見えても、他人のパンツは履きたくない。特に親しくもなければなおのこと。

コンビニで買って来るか。

財布をポケットに突っ込んで、ジャケットを着て、出掛けようとした時、腕を掴まれた。それはけっこう強い力だったので、俺は驚いて声を上げてしまった。

「うわ、ビックリした。なんですか、佐伯さん」

腕を掴んだのは当然、佐伯さんだった。

「なんで? 出て行くの?」

あなたのパンツを買いに行く為。

そんな単純な理由なのに、俺は驚いた所為で咄嗟に言葉が出ず、佐伯さんに掴まれた腕の感触を楽しんだ。佐伯さんが、ちゃんとここに居るんだってわかる、重みのある感触だった。

「三波さんが居なきゃ意味ないじゃん。俺を一人にすんの? 見張っててよ。俺が『あいつ』のとこに行かないように、見張って、この部屋に縛り付けてよ」

佐伯さんはそう言って、俺に縋った。

妄想かと思うくらい、それは俺の願望そのものだった。

「いいんですか?」

縛り付けて、ふらふら出て行かないように。見張って、俺だけを望むように。強制して、従わせて、俺なしでは生きられないくらい、俺という人間に縛り付けて、束縛したい。

それを、佐伯さんが許すはずがない。

「俺のこと好きなら当然だ」
「でも佐伯さんは彼氏のことが好きなんですよね?」
「もう好きじゃない」
「そんなこと言ったって、信じられません」
「じゃあ信じられるように、俺のこと好きにしたらいい」
「え?」

佐伯さんは、鋭い目付きで俺を睨んだ。

でも彼の頬は赤く染まっている。

「引いた? 俺ってそういうのが好きなんだ。束縛されて好きなようにされるのが好きなんだ。三波さんと付き合ったら、俺、三波さん以外の男との交友関係はみんな捨ててもいい。もしそれだけ、俺が満足できるだけ、三波さんが俺を求めてくれんならね」

そうか。

そうか、そうなんだ。

そんな都合のいいことが、あっていいのだろうか。好きな人が、俺以外の男を見ないと言ってくれる、なんてことが。

「それ本気ですか?」
「うん」

佐伯さんの目に嘘はない。

俺は、佐伯さんと向き合って、その肩を掴んだ。細くて、骨張って、筋肉がついた、ずっと触れたいと願っていた体。

それが俺だけのものになる?

俺は佐伯さんの体をまさぐった。

佐伯さんは少しも嫌がらなかった。

「佐伯さん、本当に? 全部くれるんですか? 俺に、全部くれるんですか?」

佐伯さんは「うん」と頷いた。

ああ、なんで、こんなに、急に、愛しいとか思うんだろう。佐伯さんを憎んでいたのに、あんなに怒りに震えたのに、今はそんなこと思い出すのも難しい。

閉じ込めたい。縛り付けたい。

「彼氏のこと、元彼のこと、ちゃんと嫌いなんですよね?」

そうじゃなければ、馬鹿みたいだ。今度、俺から離れて違う男のところへ行くとしたら、俺はきっと普通じゃいられなくなる。

「もちろん、そうだよ。愛想も小想も尽き果てたんだ」




曰く、“愛想も小想も尽き果てる”。
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