「ほらほら!あんた達も学習しないね!この街で悪さしたらヒーローが来るの知ってるでしょ?」
黒いコスチュームにボウガンを構えた女が悪漢達に立ち塞がる。
「邪魔すんじゃねェ!」
一応声を荒げてはいるが、明らかに及び腰だ。
「…へー?そんな口叩いて良いのかな?」
「ハントレス!」
ハントレスと呼ばれた女とは反対側から声が響く。
慌ててハントレスはマスクのスイッチを操作し、イヤープラグをOnにする、と同時に。
辺りに高音が響き渡る。
バタバタと倒れる悪漢達。
「私の熱い告白は如何だったかしら?」
そう言いながらもう1人の女が現れる。
「キャナリー…あんたのはキツすぎて大抵の男がK.O.でしょ。」
「クソ!」
全員…ではなかったようだ。1人だけ逃げようとしている。
普段から音楽を聞きながら行動していた奴が幸運?にもブラックキャナリーのキャナリークライの直撃を食らわなかったようだ。
「あ」
「あ、じゃない!追うわよヘレナ!」
「いや…そっちは…」
「なんだお前は!?う…うわぁぁぁぁ!?」
「あ〜あ…バーズ・オブ・プレイは最近、優秀な新人が加入したって言っておけば良かったっけ?ダイナ」
「わざわざ宣伝しなくても今回で一気にひろまるわ、ヘレナ」
そう言うと優秀な新人…白い白鳥のようなコスチュームを纏った女に声をかける。
「グッジョブ、ミホ!」
ミホと呼ばれた戦士の姿が光に包まれ人の姿に戻る。
「このくらいは出来るわ。後は?」
日本人らしい面差しの女性…霧島美穂はボウガンの女…ヘレナ・バーティネリに尋ねる。
「後は警察にお任せ。あたしらはパーティー。」
そう言うとそそくさとボウガンを愛車に仕舞い始める。
「飲み過ぎは無しでね。あなた明日も授業があるでしょ?教職者が酒の匂いさせて学校に行くつもり?」
賑やかな二人の隣で美穂の表情は冴えないままだった。
「私が…ですか?」
「うむ…」
日本からやってきた須藤雅史刑事に対し、市警本部長ジェームス・ゴードンは頷いた。
「最近頻発しているカニの化け物の事件は聴いているな?」
「はい、ダウンタウンを中心に起きている件ですね?」
ゴードン本部長は肯定するように深く頷く。
「あの件を君に任せたい。この街に来て日も浅い君に頼むのも気が引けるが、何分手が足りないのだ…」
ゴッサム
この街ほど犯罪率の高い街は無いだろう。マフィアが蔓延りスーパーヴィラン達が跋扈する…。
次から次へと異常犯罪が起こり被害者も甚大。自警者もヒーローを名乗りヴィラン達と戦いを繰り広げる。
市民の中には警察は役立たず…と揶揄するものもいる。
それでも、だ。
ゴッサム市警は日夜戦い続けている。人を守るのが彼らの仕事だからだ。そして仕事に誇りと魂を感じている。
「分かりました。解決に向けて全力を尽くします」
「済まん、スドウ…」
「謝らないで下さい。では私は早速取り掛かります」
そう言うと須藤は部屋を出ていった。
――――
チャンスですね
部屋から出た須藤はほくそ笑んだ。
カニの化け物ですか…フン、適当に追いつつ、寸でのところで取り逃したと言えば簡単には怪しまれないでしょう。捕まえてしまっては意味がありませんからね。
さて…私の計画を続行するとしましょうか…
「おぅい、兄ちゃんよ?」
そう声を掛けられた男は無視した。
この通りに来る前の酒場で「面白いモノに会える」と聞いてやって来たが、その歓迎は随分と荒いものだった。
…もっとも男にしてみれば望むところ。手近なパイプを掴むと無造作に振り回し、歓迎会を楽しんだ。
「無視してんじゃネェよ!俺ァは無視されるのが一番キライなんだ!」
「…手前ぇが面白いモノか?」
「面白いかどうかは兄ちゃん次第だなぁ…兄ちゃんのカッコは面白ぇがよ?」
そう言われた男の格好…蛇柄のジャケットにレザーパンツ…鋭い目付きも相まって正に「蛇」そのものだ。
「イカれた紫のスーツを着たヤツが人のジャケット、どうこう言うか?…イラつくぜ…」
紫の上下に緑のシャツ、毒々しいコサージュを飾った男…ジョーカーはその言葉を聞くと狂ったように笑いだす。
「イーヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!ホーホホホホホホホホホー!!」
「何笑ってやがる…鬱陶しい!!」
蛇男…浅倉威は手にしたパイプを振り回す。
「消えろ」「消ィえなァ♪」
2人の間に爆発が起きる!!
「いつまで続くのかしらね…」
「さぁねぇ?ケリが着くまでまだまだ時間かかりそうだし、僕らは僕らで」
「ノーよ」
にべも無く断られるグリーンのスーツを着た男と、黒いライダースジャケットを纏った美女。
2人の前で繰り広げられているのは、華麗な舞のようにすら見える闘いだった。
片やグリーンの人民服のようなコスチュームにアイマスクを着けた青年。
片や未だ少年の面差しを残した鋭い眼光の青年。
お互いに出し惜しみすることなく技を繰り出し激突する。
事の起こりは偶然だった。インターポール捜査官として証拠を探っていた流星とインガは遂に最終段階となり逮捕のタイミングを待つだけとなっていた。
そこへ望まぬ乱入者が現れた。その街で噂になっていた自警屋…グリーンホーネットがしゃしゃり出てきたのだ!
仕方なく突入した流星達だったが、まさに蜂の巣をつついたかのような状況。暴れまわる二匹のスズメバチのせいで惨憺たる有り様。
何とかターゲットの確保には成功するものの流星の怒りは収まらず、ホーネットの相棒カトーとの一騎討ちとなったのだ。
「ホゥー…ワチャー!」
「フッ!…ハイィィー!」
互角に見える闘いも少しずつ差が現れ始めていた。
流星の息が上がり始めているのに対してカトーは涼しい顔をしている。
「ハァ…クソ…舐めた真似を…」
「フン…お前も奥の手を隠してるだろ?出せよ…そしたら本気でやってやる」
「お望みならな!」
そう言うと流星は腰にメテオドライバーを巻く。
「ちょっと流星!?」
「黙れ!…行くぞ…変身!!」
青い光に包まれ流星は仮面ライダーメテオへと姿を変える。
「おおっと!?カトー?ヒーロー様の登場だ。不味くないか〜?」
「問題無い。これなら本気でいけるさ」
流星同様にカトーの雰囲気も変わる。
「あーあ…あーなったカトーは怖いからねぇ…。今の内に降参を薦めるけど?」
ニヤニヤ笑いながら、しかしアイマスクの奥の目だけは本気で心配している顔を見てインガは薄ら寒くなる。
しかし
「行くぞォォ!!」
もはや止められない。