小学生のころ、国語の教科書に、「一切れのパン」という題名の、確か実話が載っていたのを思い出した。

内容は、外国の戦時中に、ある若者、確か子どもが、どうしても、ある土地まで行く必要があって、そこには徒歩で長距離歩いて行く必要があって、そこには食べ物もない状態で行かなければならない状況があって、これはほんと、生死にかかわるくらいの大変な旅だったわけです。

で、旅立つ前に、ある人、確かお年寄りが、その子に生きてその目的地にたどり着いてほしくて、食べ物がない中で、子どもに、あるものを手渡したわけなんです。

それが、ハンカチにくるんだコチコチになったパン、おそらくフランスパンだったんです。

で、包んだハンカチは、固く、固く結んであったんです。

そして、手渡した人は、その子にこう言ったわけです。

「このパンは最後の最後までとっておけ。ほんとうに、どうしても、ほんとうにだめだ、という時までとっておけ。いいか。」と。

で、その子は長い長い旅に出たわけです。

死ぬほどの空腹の中、果てしなく歩き続けて、でも、懐に一切れのパンがあると思えば、最後の最後には食べれるんだと思えば、歩き続けることができたんです。


で、最後、奇跡的に目的地に到達できたんです。


子どもは、そのお守りのようなコチコチのパンをくれたお年寄りに心から感謝しました。


で、たどり着いた先で、ハンカチをあけたんです。





ハンカチにくるまれていたのは、パンではなく、干からびた木のかけらだったんです。






わたしにも、一切れのパンがあります。

それは単なる木片なのかもしれませんが、一切れのパンがあるんです。


それがパンだとわたしは信じて歩き続けてみます。