今日の仕事の監査会場は、私が初めて行く場所だった。

会場に近づくにつれ、そろそろだな、というのがわかった。意識しなくても、そろそろだな、待っているな、という気がした。

待っているな、というのは、人が待っている、というのでなく、場が待っている、という、雰囲気。

そもそも、会場には20分以上前に着くようにしている。誰も待たせてはいない。


監査対象が準備した会場は、小さな地区の公民館。

着いて会場を見たとたん、会場が私を待っていたということに気付いた。

妙な話だけど、会場に「待たせたね」と言った。


会場前の駐車場の車の中で、今日の資料を見ながらチームのメンバーを待った。

開始6分前に集まった。


会場、公民館に入る。



公民館のお部屋は広間。30畳ほどの。

白色の壁紙。飾られた額縁。デスク。書類。帳簿。移動式黒板。丸ストーブ。居並ぶ役員。といっても、おじさんら。地方の。


監査は始まった。

順調に。



でも。


私の左側の辺りが見ているのです。



左側には、何のへんてつもない引き戸がある。
引き戸がある、といっても、壁の片側すべてに引き戸がある。

その中で、私の左の引き戸辺りが、私を見ているのです。
期待している感じで。


私もわかっていました。





監査もお昼になりました。


お昼になり、私は対応の事務員に尋ねました。
「この場所には、昔何がありましたか。」

事務員は、「え、何、とおっしゃると?昔から公民館ですけど。」と。


私「この引き戸は」


事務員「あっ、ここですか。」
事務員はていねいに引き戸を開いたのです。



中には、祭壇があり、かなり古い像が六体ほど、あと、日本人形とか、和風の人形とかがガラス箱に入って数体。あったのです。


「ここは祭壇です。お墓のない人たちもまつっています。」




離れたところにいる役員の一人が言いました。


「ここには、公民館が建つ前からこうしてまつられているんです。ずっと昔から。ずっと。」



そうだったんですね。

まっていたのはあなた様がただったんですね。


「おまたせしました。」


私はしずかに手を合わせました。